Behind the Curtain: The art of persuading Trump
(WAJ: 本サイト「世界の声」コーナーでは「ドナルド・トランプを洗って正気にみせたい心を読む なぜこんなにも多くがトランプ氏の発言を正当化しようとするのか?」 を掲載した。外部からトランプ氏の心の内を解釈して彼が狂っているわけではないと解釈しようとする連中の心の動きを分析する記事だった。この記事も、狂っているだけでなくコロコロ変わるトランプ氏を周囲がどうなだめすかし暴走させないようにしているか、カーテンの裏側を描いている。なおこの記事をベースに、さらにもう一歩踏み込んで、高関税攻撃を世界に向けて発動した直後までのトランプ氏の取り巻き立ちの挙動の推理を野口のつぶやきで紹介した。トランプ劇場の役者たちの立ち居振る舞いが良く理解できるパロディー。)
ジム・ヴァンデハイ、マイク・アレン
2025年4月28日
トランプ大統領は日曜日、ニュージャージー州モリスタウンで大統領専用機エアフォースワンに搭乗する前にメディアに対し演説した。写真:ネイサン・ハワード/ロイター
トランプ大統領のリーダーシップはアドリブかつ予測不能を旨とし、閣僚、顧問、そして友人たちは愚か、危険、または実行不能のいずれかだと思いながらも、それを取り繕うルールブックの開発を強いられている。
なぜ問題なのか:ホワイトハウスの補佐官、トランプ政権の閣僚、企業トップのCEOたちは、「ボス」のパンチをかわすのに、しばしば小手先のテクニックに頼ることになる。
現在の貿易摩擦は、まさにこの現実を如実に表している。多くの政府高官が、トランプ大統領の積極的かつ全面的な関税導入への固執に疑問を抱いている。ほぼ全てのCEOが、その構想全体とその実行方法は愚かで妄想的、そして破壊的だと密かに語っている。
● 彼らは、トランプ氏が勝利の勢いに乗って、減税や規制緩和を行い、世界の貿易と投資を自国の利益のために賢く再設定していたら、アメリカはいま無理なく黄金時代の入り口立っていたはずだと信じている。
● 彼らは 、予想外のショックもなく、今年は爆発的な成長が展開されると予測していた。
しかし、トランプこそが彼らの恐れたショックだ。彼のアドリブ戦略と法外な関税は、世界経済のほぼあらゆる側面を震撼させた。
● 現状では、特に経済的な痛みを和らげるのに好都合なタイミングでこの状況を逆転させることは困難だ。
ホワイトハウス内では、役人たちが日々ダンスを捧げ、トランプ氏をなだめたり、優しくそそのかしたり、おだてたりして彼の世界観をずらせようとしている。
●(多くの人は犯すが)間違いを犯すな:トランプ氏は、これまで追求してきたあらゆるテーマと同様、関税への取り組みを強く信じている。
● 彼のチームは関税の引き上げ案に全面的に賛同している。しかし、どのように、いつという詳細は大きく異なっている。
こうしてダンスは始まるが、際だったステップをいくつか伴う:
1. ブロック:トランプ氏は最後に聞いたことでコロッと態度を変えるとして悪名が高い。そのため、スコット・ベッセント財務長官や、貿易戦争を和らげようという長官の見解に賛同する人々は、トランプ氏と2人きりの時間を確保しようと懸命に努力している。ブロックすべきはピーター・ナバロ氏のような関税好きの戦士たち。時にはライバルたちの動きをトラッキングし、トランプ氏との会談の直前に割って入る。
2. 恐怖:トランプ氏は2度の選挙に勝利し、銃撃に遭いながらも生き延びたため、説得するのは非常に困難だ。彼の自信と独善は空高く舞う。しかし、彼は恐怖に完全に無頓着というわけではない。そこで恐怖の植えつけ。政府高官たちは先週、ウォルマート、ターゲット、ホーム・デポから発せられた経済に関する悲観的な警告を彼に聞かせようとした。また、3週間前のジェイミー・ダイモン氏による金融危機の可能性の予測が、トランプ氏にFRB議長ジェイ・パウエル解任を留まらせたことは、このステップの効果を示している。
3. 栄光化:これはトランプ氏を動かす際にますますよく使われるステップだ。別案を出すに際し、「中国を孤立させようとしている!」とか「天才的な取引術で交渉する!」とか、まるでそれが素晴らしいと同時にトランプ氏自身のアイデアであるかのように聞こえさせる。そのためには、トランプ流言語を用いて、そのアイデアが新鮮で賢明だと感じさせる。ただし決しておべんちゃらだと気づかれぬように。
4. 小突き:これはトランプ氏を説得する新次元のステップ。トランプ氏は追い詰められること、つまり妥協や屈服を強いられることを嫌う。そのため、側近たちはデータの示す数値、友人やトランプ氏が尊敬するCEOといったルーティーンを、目立たぬようにスローテンポで組み合わせ、彼を動かす。
5. テレビ:これは古くさくもおいしいステップだが、それには理由がある。まだ働くのだ。尊敬されるCEOたちに適切な番組に出演してもらい、適切な発言をしてもらう。トランプ氏が必ずその番組を見るか、あるいはその録画を見ると分かっているからだ。だからこそ、関税に関するニュースの多くはFox Newsで報道され、Fox Businessのキャスター、マリア・バルティロモが「Mornings with Maria」という番組で取り上げることが多いのだ。
6. 意思統一:トランプ氏は意思統一のステップを見ると率直な意見を受け止める。だが、それには彼の側に準備がいる。株式市場と債券市場の暴落の後、トランプ氏は90日間の関税発動停止を決定したが、それに先立ち、バンス副大統領とスージー・ワイルズ大統領首席補佐官(訳注:トランプ大統領が心服する女性アドバイザー)との複数回にわたる会談がもたれた。また、トランプ氏が中国に対する145%という高関税の引き下げについても議論を始めたのは、ハワード・ラトニック商務長官が、中国との貿易がゼロになれば米国は関税収入がゼロになると彼に告げたときだった。
舞台裏:ホワイトハウス内外を問わず、トランプ氏の顧問たちは、大統領が率直な助言を受けつけないという意見に憤慨している。彼らは、大統領が管理されたり制限されていると感じたりしない情報環境を作り上げたのはワイルズ補佐官だと評価している。そのため、彼女は、意見を共有できるCEO、自動車メーカー、大手小売業者との数多くの会合をトランプ氏のスケジュールに詰め込んでいる。
●「彼女は全ての答えを持っているとは主張していないが、非常に複雑な情報の流れを驚異的な戦略と効率性で調整している」と、あるアドバイザーがアクシオス(訳注:この記事を掲載したアメリカのニューメディア)のマーク・カプートにテキストメッセージで伝えた。
●「彼女の目的は、トランプ氏にありのままの真実を伝え、彼が決断を下せるようにすることだ。彼女は決まったことを有効にするためにと手順をごまかすことはしない。だからこそ、トランプ氏は彼女を信頼し、彼女に決定を下す裁量を与えているのだ。」
しかし、そのアドバイザーによると、 CEOの中には外で強気な発言をしながらも、ホワイトハウスに入ると態度を軟化させる人もいるらしい。
●「トランプ氏はひとりでも驚くほど威圧的な存在であり、ましてや大統領執務室のあのレゾリュートデスク(訳注:ホワイトハウスには大統領用に6つの執務机があるがトランプ氏は前期よりこれを愛用している)につくと、最も有能なCEOでさえ縮み上がることを彼女は知っている。」
Axiosのマーク・カプート氏がレポートに貢献した。