Trump seeks return of US military equipment from Afghan Taliban

(WAJ: ボイス・オブ・アメリカは、言わずと知れたアメリカの国営放送。政府直営だが報道の独立性は担保されている。とはいえ、アメリカ政府の政策に忠実であることは間違いない。トランプ大統領就任式の前日に次のような報道をしている。その報道によれば、トランプ第2次政権は、アメリカがアフガニスタンに残してきた資産(主には軍装備品)とアメリカが凍結しているアフガニスタンの国家資産(ドル外貨)をめぐってターリバーンとの交渉が始まるだろうことを明らかにしている。むしろ、交渉は水面下ですでに進んでいるのではないか。「ターリバーン、米国との捕虜交換を発表」参照。)

 

2025年1月20日
アヤズ・グル

FILE - UH-60 Black Hawk helicopters fly during a military parade to mark the third anniversary of the withdrawal of U.S.-led troops from Afghanistan, in Bagram Air Base in the Parwan Province of Afghanistan, Aug. 14, 2024. 資料写真- UH-60ブラックホークヘリコプターが、2024年8月14日、アフガニスタンのパルヴァーン州バグラム空軍基地で、米主導軍のアフガン撤退3周年を記念する軍事パレードで飛行している。

ドナルド・トランプ次期大統領は、アフガニスタンへの今後の財政支援は、現在権力を握っているターリバーン指導者による米軍装備の返還に左右されると述べた。

1月20日の就任式前日の日曜日、ワシントンで行われた集会でのトランプ氏の発言は、危機に瀕している南アジアのこの国に対する政権の立場に関する不確実性を高めた。

「彼ら(バイデン政権)はターリバーンに何十億ドルも与えた。彼らは我々の軍事装備の大部分を敵に与えた」とトランプ氏は述べた。彼は、ジョー・バイデン大統領の命令により、2021年8月、米軍がアフガニスタンから混乱しかつ性急に撤退したことに言及した。

「もし我々が年間何十億ドルも支払うつもりなら、我々の軍装備品を返還しない限り金は与えないと彼らに伝えよ。…つまり、数ドルは払ってもいいが、とにかく全軍備装備を返せ、と」とトランプ氏は詳細には触れずに述べた。


ターリバーンはトランプ政権下での米国との関係改善を・・・

2022年に米国防総省が発表した報告書によると、軍撤退完了後、約70億ドル相当の軍装備品がアフガニスタンに残されたことが明らかになった。問題の装備品には、航空機、空対地弾、軍用車両、武器、通信機器、その他の資材が含まれており、ターリバーンに押収されている。

事実上のアフガニスタン支配者は、過去3年間、いわゆる勝利記念日の祝賀会で米軍の装備品を繰り返し披露してきた。

外国軍の撤退は、トランプ政権が当時反政府勢力だったターリバーンと交渉した2020年2月のドーハ合意に端を発している。バイデン大統領は軍事撤退を完了させ守りに徹したが、自分に残された選択肢はその合意を履行するか、それともターリバーンとの戦いに戻る準備をするかの二者択一だったと述べた。

撤退後、バイデン政権はターリバーンをほぼ孤立させ、同グループに新たな制裁を課した。しかし、ワシントンは、国連が世界で最も深刻な人道危機に見舞われている国のひとつとしているアフガニスタンへの最大の援助国であり続けている。米国当局はまた、ターリバーンと外交努力を交わし、一部の米国人拘束者の釈放を交渉し、米軍を支援したアフガン人同朋の移住を支援してきた。

 

米国、人道支援に現金提供

トランプ氏が繰り返し言及している数十億ドルは、おそらく国連や非政府組織を通じてアフガニスタンの人道支援プログラムを支援するために送られる現金輸送のことだろう。ワシントンは依然として主要な援助国であり、米国撤退以来、約30億ドルを人道支援に費やしてきた。

独立系アフガニスタン アナリスト ネットワーク(AAN)のトーマス・ラティグ氏は、トランプ政権下でのターリバーンに対する取り組みについて警告した。同氏は、国会議員や新政権の高官の中には、20年間の米国アフガニスタン任務に参加し、ターリバーンを強く批判してきた者もいると指摘した。

それにもかかわらず、同氏は、地域テロ対策はワシントンにとって重大な懸念事項であり、トランプ政権がアフガニスタンに拠点を置くイスラム国テロ組織の関連組織であるIS-K(IS-ホラーサーン)を含むテロ組織と戦うためにターリバーンとの協力を求めるよう促す可能性がある、と述べた。

ラティグ氏は、米議会外交委員会の共和党副委員長ティム・バーチェット氏が最近、「テロリストへの税金供給禁止法案」を提出し、米国の税金がターリバーンの手に渡らないようにすると述べた。

アフガニスタンの国連支援ミッション(UNAMA)は、人道プログラムのための現金輸送がターリバーンの資金源になっていることを否定している。同ミッションは、現金が物理的にアフガニスタンに持ち込まれ、民間銀行の指定された国連口座に預けられる現在の仕組みは、国際銀行間決済禁止と解決の見込みのない資金流動性の欠如が理由であると述べている。

「これらの資金はすべて、その後、国連機関と、アフガニスタンで承認され審査された少数の人道支援パートナーに直接分配される」と同ミッションは述べている。

ターリバーンの指導者たちは、自国政府が米国から財政援助を受けたというトランプ大統領の主張を否定し、ワシントンからのいかなる支援も期待も求めていないと述べている。「それどころか、米国は、アフガニスタン国民が本来有すべき数十億ドルを没収し、凍結した」とターリバーンは今月初めのトランプ大統領の発言を受けて声明を発表した。

ルティグ氏は、ターリバーンに服従を迫るため懲罰的措置や制裁を課すと、彼らを怒らせ関係国との協力を停止するかもと警告している。

「現在、米ターリバーン・ドーハ合意は依然として有効とみなされており、ISKP(イスラム国ホラーサーン州)やその他のグループがアフガニスタンの隠れ家を西側諸国でのテロ行為に利用することを制限する義務をターリバーンに負わせている。この措置が、彼らに対する新たな制裁もどきによって危険にさらされる可能性がある」と彼は書面で述べた。

 

ターリバーンはより良い関係を望んでいる

アフガニスタン系アメリカ人で女性の権利を訴えるマスダ・スルタン氏は、トランプ新政権がターリバーンに対する姿勢を実質的に変えることについては懐疑的だ。むしろ、同国で最も弱い立場にある人々を支えてきた世界食糧計画など国連資金によるプログラムへの援助金を米国が削減すると予想している。

<参考サイト> マスダ・スルタン氏について
https://en.wikipedia.org/wiki/Masuda_Sultan

一方、ターリバーンの指導者らは、トランプ大統領の下で米国の政策が好転すると公に楽観視しており、その理由はトランプ前政権とのドーハ協定にあるとしている。カーブルのターリバーンは、彼が米国大統領選挙の勝者と宣言されると早くも翌日にトランプ氏の選挙勝利を歓迎した。

ターリバーン外務省は、「新政権が二国間関係の具体的な前進を確実にするために現実的なアプローチを採用し、両国が相互関与に基づく関係の新たな章を開くことができるようにすること」への期待を表明する公式声明を発表した。

今月初め、ターリバーンのシェール・モハマド・アッバス・スタネクザイ外務次官はトランプ氏を「決断力のある」「勇敢な」指導者と称賛した。スタネクザイ氏はトランプ氏にバイデン氏の政策を再考し、新たなアプローチを採用するよう提案した。

「我々は国際社会や西側諸国と良好な関係を築きたい」とスタネクザイ氏は現地語でテレビで語った。「敵は永遠に敵のままではないし、友人も永遠に友人のままではない」と同氏は付け加えた。

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