Proxy Powers, Artificial Wars, and Geopolitical Competition in Afghanistan
(WAJ: 米国のアフガニスタン特使であったザルメイ・ハリルザドによるドーハ合意は米・パキスタンの利益を優先し、ターリバーンを台頭させたが、ターリバーンは民族主義的で女性抑圧的な統治を行い、国家主権を損なっている。ターリバーン、ISIS-K、TTP(パキスタン・ターリバーン運動)の戦闘は実質的にパキスタン主導の演出であり、過激派を利用した欺瞞的地域戦略である、と本稿は述べ、結果としてアフガニスタンは恒常的な内乱、外国依存、主権喪失の状態に落とし込まれ、独立政府の確立は困難だと結論づけている。本サイトのアフガンサイト主筆である本稿の著者ファテー・サミ氏がこの間、本サイトに執筆した論説のすべては「ファテー・サミ執筆記事一覧」で読むことができる。)
ファテー・サミ(Fateh Sami):フリーアカデミック研究者
2025年10月17日

はじめに
中東、ウクライナ、そしてアフガニスタンにおける最近の動向は、冷戦後の世界秩序がもはや単極構造を維持できないことを示している。世界は根本的変化の瀬戸際にあり、主要・地域大国はそれぞれの立場、利益、勢力圏を再定義している。アフガニスタンは中東や南アジアと並び、代理戦争・軍拡競争・秘密同盟が国際政治の力学を再構築している重層的な競争の舞台となっている(Waltz, 1979; Nye, 2004)。
理論的観点から見ると、単極から多極への移行は自然な結果である。すなわち、中国の経済・軍事力の拡大、ロシアの再浮上、そしてインド・トルコ・イランといった新たなアクターの台頭である。ジョン・ミアシャイマーやケネス・ウォルツなど構造的リアリズムの学者は、このような環境下では、勢力均衡を保ち単一勢力による支配を防ぐための権力競争が不可避であると主張する(Mearsheimer, 2019)。
一方、ジョセフ・ナイの「ソフト・パワー」概念は、現代の影響力は軍事力のみならず、技術・情報・メディア・思想ネットワークからも派生することを強調する(Nye, 2004)。
アメリカの外交政策は世界的覇権の維持を目指してきた。ソ連崩壊後に確立されたその地位は、いまや中国とロシアによって強く挑戦されている。ワシントンは複数の戦線で行動している。ヨーロッパではウクライナ戦争を通じて、中東ではイスラエルへの無条件の支援を通じて、そして南アジアではパキスタンとの連携やアフガニスタンへの間接関与を通じてである。これらの政策は軍事的・地政経済的両側面を含み、エネルギー資源・輸送経路・情報ネットワークの支配が世界的競争の中核を形成している(Haass, 2024)。
アフガニスタンは中央アジア・南アジア・中東の交差点に位置する地政学的要衝であり、歴史的に常に勢力争いの焦点であった。過去に英国、ソ連、米国が介入したが、いずれも多大な犠牲を払っても恒久的な支配を確立できなかった。これらの失敗は、アフガン社会の強靭さだけでなく、厳しい地形条件と自立への根強い願望に起因する。現代の分析者は、ワシントンが「統制された不安定化」戦略を用いていると指摘する。これは中国・ロシア・イランを自国周辺で消耗させつつ、戦略的目的を追求するためにアフガン内部の対立を持続させるものである(Jones, 2021)。
代理勢力とアフガニスタン危機の操作
アフガニスタンの危機は、代理勢力によって大きく形づくられてきた。ドーハ交渉後、ザルメイ・ハリルザドが米国代表として登場したが、歴史的・政治的分析によれば、彼の行動はアフガン人民ではなく主としてパキスタンの利益を推進するものであった。調停者を装いながら、ハリルザドはパキスタンのマドラサ網とISI(軍統合情報局)の訓練を受けたターリバーンの台頭を、民族・政治エリートの組織的支援を通じて促した。この操作は、ターリバーンに政治的正当性を与えるどころか、彼らの残虐で民族偏重・女性蔑視的な本質を世界に露呈させた(Mearsheimer, 2019; Haass, 2024)。
ハリルザドのメディア操作や表面的な報告はこの失敗の影響を小さく見せようとしたが、直接的責任を免れるものではない。アフガニスタンの人々にとって彼は中立的仲介者ではなく、外国支配と代理介入の歴史的再現であり、国家の真の利益を無視してパキスタンの国内政治への影響力を強化した存在とみなされている(Waltz, 1979)。このようなパターンはアフガン史に繰り返し見られ、シャー・シュジャー、アミール・ドスト・モハンマド・ハーン、アブドゥル・ラフマン・ハーン、ナーデル・ハーンらが外国勢力の代理人として記録されている。
ターリバーンおよびISIS-K(ダーイシュ・ホラーサーン)やTTP(パキスタン・ターリバーン運動)などの関連組織をめぐる紛争は、代理戦争と戦略的欺瞞の典型である。これらの組織には選挙による正統性も国家的基盤もなく、パキスタンのデオバンディ系ネットワーク内でISIの支援を受けて誕生・育成され、イスラマバードの戦略的目的に奉仕している。ISIS-KやTTPは時に独自行動するが、実質的にはパキスタンおよび地域・域外勢力の利益を推進するために設計されており、アフガニスタンの主権を損なっている(Bennett, 2023)。
ドーハ合意やターリバーンのメディア演出などの水面下の取り決めは、表面的な正当化を超えたものである。それらの目的は、ターリバーンを国際社会における「対テロ勢力」として演出することにある。しかし実際には、同組織は不安定・過激主義・パキスタン依存の主要な源であり、見かけと現実の乖離はアフガン国民に深刻な影響を及ぼす。この根本原因を無視する分析や報道は本質的に誤解を招くものである。
ターリバーンとパキスタンの「仕組まれた戦争」と南アジアにおける欺瞞戦略
ターリバーンとISIS-K、TTPなどの関連組織との「対立」として描かれる戦争は、多くの場合、世界および地域の認識を操作するための演出にすぎない。これらの組織には政治的正統性も民意の支持も本来的な国民的基盤もなく、パキスタンのデオバンディ系ネットワークとISIの支援のもとで育成された地域戦略の道具である(Bennett, 2023)。
ISIS-KやTTPは時に独立して行動するものの、構造的・作戦的にはパキスタンの地域不安定化装置の不可欠な一部である。彼らが作り出す継続的な不安はアフガニスタンの主権を損ない、パキスタンの支援網を利用してほぼ免責的に活動している。この状況はアフガン国民と国家安全保障を脅かすだけでなく、外国の介入と外部支配を容易にしている。
欺瞞戦略の主要要素
(1)ターリバーンの「正統性」という外見を構築・強化し、国際的支持を得る。
(2)内部紛争と地域対立を助長し、独立した中央権力の出現を阻止する。
(3)過激派組織をパキスタンおよびその同盟国の地域的影響力の道具として利用する。
(4)対テロ作戦を演出するメディア・スペクタクル(訳注:あらゆる事象をスペクタクル化するメディア)を通じ、ターリバーン像を再構築する。
要するに、ターリバーン・ISIS-K・TTPの作戦は、統治主体というより、地政学的競争における支配・影響力の手段として機能している。この過程はアフガン統治と安全保障を損なうだけでなく、南アジア地政学の複雑さを浮き彫りにしており、厳密かつ実証的分析の必要性を示している(Haass, 2024)。
アフガン危機における地政学的競争の地域的・国際的影響
地政学上の位置ゆえに、アフガニスタンは常に主要・地域大国の競争舞台であり続けてきた。代理政策・演出された紛争・過激派組織の道具化は、アフガニスタンの独立と真の主権を破壊した。ターリバーン、ISIS-K、TTPは、アフガン国民の代表ではなく、主としてパキスタンおよびその地域同盟国の手先として機能している(Bennett, 2023)。
この危機の影響は以下の4点がその特徴である。
(1)持続的な国内不安定化による紛争・貧困・インフラ破壊の長期化。
(2)代理勢力と過激派組織を通じた外国勢力によるアフガン政治・経済支配の強化。
(3)パキスタン・インド・中国・主要国間における輸送・安全保障・資源をめぐる地域競争の激化。
(4)国益と市民権を擁護できる独立した正統政府樹立の見通しの限定。
これら諸問題は深刻かつ多面的で、アフガニスタンに大きなハンディキャップを背負わせている。
<参考文献>
・Bennett, R. (2023). Proxy Warfare and Strategic Deception in South Asia. London: Routledge.
・Mearsheimer, J. J. (2019). The Great Delusion: Liberal Dreams and International Realities. New Haven: Yale University Press.
・Jones, S. G. (2021). Three Dangerous Men: Russia, China, Iran, and the Rise of Irregular Warfare. New York: W. W. Norton.
・Haass, R. (2024). The Bill of Obligations: The Ten Habits of Good Citizens. New York: Penguin Press.
<著作権・利用に関する注記>
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