ユーラシア

20240902
 中国経済を見る眼と日中関係の行方 
福井県立大学名誉教授 凌星光(2024年8月24日、BIS第187回情報研究会)

中国経済の減速を問題視する報道が多くみられるが、中国経済は2010年代に中速度の段階に入っており、減速は当然である。実は、1994年出版の拙著「中国の経済改革と将来像」の序章で、中国の高度成長は35-45年続くと書いた。2015-2025年は正に高度成長から中成長に入る転換期である。約10年前には盛んに中国経済が中所得国の罠に陥る危険性が論じられたが、それは見事に克服され、中国の1人当たりGDPは2万3332ドル(2023年時点での高所得国基準は1万2695ドル)と高所得国入りした。成功の最大の要因は謙虚に学び改革し、教育と科学研究に力を入れ投資を拡大したからだ。中国の科学研究費対GDP比率は1996年0.6%、2001年1.1%、2008年1.6%、2013年2.0%、2021年2.43%と高まり、今や上位先進国並みである。
高度経済成長は発展途上国が後発性利益を享受して先進国に追いつく歴史的「特殊」現象である。それは年率7-9%の高成長で、そのうちに4-6%の中成長に、更に1-3%の低成長に移行していく。高成長期間は先進国との格差によって決まる。日本は20年足らず、アジアNIESEは約30年、中国は約40年である。経験則によれば、二桁台の高成長はひずみをもたらし正常とは言えない。そこで高成長率を7-9%と限定すると格差によって期間が決まってくるというわけだ。そして高成長実現には比較優位を体現できる環境作りが不可欠で三つの条件を整える必要がある。そうすれば国内経済と対外経済との好循環が形成され高成長が実現する。・・・
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英雄胡友平女史
 英雄胡友平女史への頌歌、日本大使館への賛辞、日中友好の構築!  

福井県立大学名誉教授 凌星光

(WAJ: 2024年6月24日に中国蘇州で起きた日本人母子がスクールバスで襲撃され、暴漢から母子を救おうとした中国人女性が死亡した事件は日本と(中国にも)衝撃を与えた。痛ましい事件であったが、勇気ある中国人女性の行動はこの間ギクシャクしてきた日中関係の将来に明るい未来を垣間見せるものでもある。胡友平さんの名前は、2001年山手線大久保駅で線路に落ちた乗客を救おうとして命を失った韓国人留学生イ・スヒョンさんの名とともに永遠に記憶されるべき名前である。国家間の関係がどうであれ、庶民どうしの友好の志に壁はない。 )

本文は中国語で書き、6月30日に公表、中国の読者からは好評を得た。ある日本の友人が、是非、本文を見たいというので、日本語に訳した。日本の読者からも共鳴を得られれば幸いである。(2024年7月7日)

1 6月24日の事件
6月24日、蘇州で日本人母子とスクールバスが襲撃される事件が起きた。バス案内役の胡友平さんは勇気ある行動で、まず刃物で切り付けられた母子を庇い、次に犯人がバスに乗り込もうとするのを阻止し、母子とバス内の子供たちを救った。しかし、胡女史自身は刺されて重傷を負い、26日、救急手当の甲斐なく不幸にして息を引き取った。人を救うために勇敢に闘う彼女の正義の行動に人々は深く感動する。あの時、犯人を止めなければ、多くの犠牲者を出していただろう。中国の全国民は、彼女の正義感に感嘆し、彼女の死を惜しんだ! 蘇州市は、胡女史に「正義と勇気の(見義勇為)模範」という称号を授与された。
中国各界の人たちは、悲しみと哀悼の意を表明すると同時に、金銭や物品を寄付してお悔みの意を表そうとした。しかし、家族は次のように応えた。「ここ数日来、私たちは各方面からお心遣いとお悔みを賜り、皆様のお気持ちに心から感謝いたします。が、金銭と物品につきましては受け入れないことを、家族会議にて全員一致で決定いたしました。それらについては、各地にある『見義勇為基金』に寄付されるよう、ご提案致します」と。 これは中国社会がますます成熟し、ますます文明的になったことを反映している。28日、蘇州市葬儀ホールで胡友平さんの告別式が行われ、家族、友人、親戚、一般市民、及び市・区レベルの関係指導者が悲しみと哀悼の意を表した。

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 目次 

『中国の一帯一路構想』――中川十郎(BIS会長)
『インドの時代到来か』――中川十郎(BIS会長)
『鑑真和上 日中学生交流 プロジェクト』に想う 日本ビジネスインテリジェンス協会・中川十郎会長
<21世紀に地球上の政治・経済の中心地域になる『一帯一路と中央アジアの動向』 中川十郎会長
ネパール今昔ほか、元青年海外協力隊員の諸国訪問記ー長谷川隆(元青年海外協力隊員)
1956年(昭和31年)にカブールから届いた一通の手紙――姫田小夏(ジャーナリスト)
「シルクロード文庫」が中野区に3月開設 東西交流史の研究書など1万点以上 故前田耕作さんの遺志受け継ぎ
台湾・沖縄・琉球弧を戦場にするな!全国キャラバン
『新疆公安ファイル』流出した中国治安当局の膨大な内部資料
『秘められたシルクロード タジクの黄金遺宝』/日本語版」シルクロードを理解するのに必携の書完成、そして次の事業へ
満州に日本人開拓民の遺骨を祀る周恩来首相と中国人の好意で作られた「中日友好園林」
『砂嵐に耐えて』~「砂漠の新聞」から シリアの自然と歴史(高畑 滋)
村石恵照さん、アフガニスタン・セピア色の旅に今を思う
アフガニスタン・パンシール: 山の学校 第4回 現地報告会開催のお知らせ
長倉洋海さん、アフガン直近訪問レポート(ターリバーン・カーブル占拠直前)
『シルクロードの現代日本人列伝』 白鳥正夫著
「ユーラシア大陸で花開いた絨毯の魅力」 奇跡の発見! パジリク絨毯の謎(榊龍昭)

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 「シルクロード文庫」が中野区に3月開設  

東西交流史の研究書など1万点以上 故前田耕作さんの遺志受け継ぎ

2023年1月4日 東京新聞 TOKYO Web

開館に向けて準備が進むシルクロード文庫で「前田先生の遺志を引き継ぎたい」と願う安仲さん=東京都中野区のシルクロード文庫で

まえだ・こうさく 1933年生まれ。国連教育科学文化機関(ユネスコ)のアフガニスタン文化遺産保護国際調整委員などを歴任。自ら設立した「アフガニスタン文化研究所」の所長を務めた。2001年にタリバン政権が大仏とともに破壊した仏教画の修復に関わり、21年のタリバンの復権後は各国の専門家とともに現地の文化財の保護に努めた。著書に「巨像の風景」など。

和光大名誉教授などを務めたアジア文化史研究の権威で、昨年10月に89歳で亡くなった前田耕作さん=三重県亀山市出身=が生前に構想した専門図書館「シルクロード文庫」が3月21日、東京都中野区に開設される。東西交流史の研究書など1万点以上を収める。前田さんは「多様な民族交流の歴史を知れば、戦争につながるような紋切り型の民族観から抜け出せる」と語っていた。有志が遺志を受け継ぐ。 (林啓太)

前田さんは1960年代から、名古屋大の調査団員としてアフガニスタン・バーミヤンをたびたび訪問。遺跡や文化財の研究に力を注いだ。古代・中世に中国と欧州を結び「文明の十字路」とも呼ばれた交易路シルクロードの実態解明で高く評価された。
 図書館の開設は、交流史を学ぶ拠点を作ろうと、教え子の有志らと10年ほど前に計画した。前田さんを中心に2019年に合同会社を設立。JR東中野駅前のビル8階部分(約120平方メートル)を借り、準備を進めてきた。前田さんら研究者が集めた貴重な本が、散逸するのを防ぐ狙いもある。
 館内には絶版の書籍を含む一万数千冊を収蔵する。シルクロードの宗教、美術、経済などにまつわる史料や研究書が中心で、研究者ら7人の蔵書。うち前田さんの遺品が約半数を占める見通し。関連書籍の寄贈も受け入れる。運営費は利用者の寄付や、併設するカフェの売り上げを充てる。
 有志の1人で入居するビルの運営に関わる安仲卓二さん(67)=東京都狛江市=によると、前田さんは、図書館について「新しい発想や、果敢な行動が生まれる豊かな知の森に育てたい」と話していた。ロシアのウクライナ侵攻の際は、自民族を絶対視する考え方が背景にあると指摘。多民族が交差したシルクロードの歴史を、多くの人に理解してほしいと願ったという。
 安仲さんは「前田先生は、文化を通じ世界を変えようとした。戦争で国同士が争う今、新しい図書館を、多様性の大切さを考える場にしてゆきたい」と語る。

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 台湾・沖縄・琉球弧を戦場にするな!全国キャラバン  

沖縄を撮り続けているドキュメンタリー映画監督の藤本幸久と影山あさ子が、 取材映像を持って全国をまわります。

 

(WAJ)アフガニスタンの復活を祈って制作された日本アフガニスタン合作記録映画『よみがえれ カレーズ』の助監督・藤本幸久さんは、その後、反戦やアジア問題、最近は沖縄の基地問題を長年現地に密着して記録映画の撮影、全国上映をつづけています。そのアピールが送られてきました。各自の可能な範囲でのご協力をお願いします。

「台湾有事」をめぐる動きが、緊迫度を増しています。
日本政府は、「台湾有事は日本有事」と言いますが、これはどうしても起こしてはならない戦争です。
台湾だけでなく、与那国島、石垣島、宮古島、沖縄島、奄美大島という琉球弧の島々を主戦場とする戦争だからです。
2006年に日米政府が合意した在日米軍の再編で、日本の自衛隊は米軍の目下の同盟国として、アメリカの戦争で積極的な役割を担うことになりました。琉球弧に次々とつくられている陸上自衛隊のミサイル基地は、アメリカの対中国戦略の最前線を担います。
明らかになった日米共同作戦計画は、琉球弧の島々に臨時拠点を設け、米海兵隊が高機動ロケット砲(ハイマース)で中国艦船を攻撃する、反撃を避けながら島々を移動しながら攻撃を続けるというものです。
ウクライナでもアメリカはハイマースを提供し、対ロシア戦の最前線で使われています。
自衛隊は島から移動せずに、地対艦、地対空ミサイル攻撃を行い、海兵隊を支援し、敵が上陸すれば地上戦を戦います。
戦場は琉球弧、日本列島です。世界第1位、第2位の軍事大国で、核保有国の大国が対時する戦争です。

中国にとってのレッドラインは「台湾独立」という「現状変更」です。武器供与、軍事協力、沖縄近海での大規模な日米共同演習など、アメリカは軍事的関与を強めています。バイデン大統領が台湾防衛への決意を繰り返し語ったり、ペロシ下院議長が台湾訪問したりする様子は、アメリカがウクライナ戦争前に、ロシアのレッドラインを繰り返し刺激・挑発した姿にも重なります。

石垣島の陸上自衛隊基地も今年度開設予定で、琉球弧の軍事要塞化も完成が近づいています。2400万人の台湾住民、155万人の琉球弧住民を巻き込む戦争は、絶対に止めなければなりません。

台湾・琉球弧を戦場にしないために、今、何をしなければいけないのか。現地の人々の思いと闘い、琉球弧の最前線基地化の現状を伝えます。20年間の取材映像をご覧頂きながら、藤本幸久、影山あさ子で全国各地を回る計画です。ぜひ、みなさまのところでも、機会をつくって頂きたく、お願い申し上げます。

2022年8月15日
ドキュメンタリー映画監督 藤本幸久・影山あさ子

藤本・影山が全国、どこでもうかがいます。講演料3万円です。これまで製作した作品の上映も可能です。交通費の実費と、必要な場合は宿泊をご用意ください。撮影中の北海道、もしくは沖縄から行く可能性も高く、近隣地域で複数のイベントをつなげて頂くと、交通費は少なくてすみます。

(連絡先)森の映画社〒081-0035 北海道上川郡新得町上佐幌基線 84-4
morinoeigasha@gmail.com FAX 011-351-1068 電話 090-2052-9902 (影山)

houmasab

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「星火方正(ほうまさ)」

 ~燎原の火は方正から~ 

 

『ウエッブ・アフガン』読者の方から機関誌「星火方正」(方正友好交流の会 会報33号)をお送りいただきました。同会は日中友好の貴重な活動をつづけておられます。

戦前、満州には開拓団として日本から一時は約38万人が入植者として送り込まれた。大半は貧しい農民家族だった。日本が降伏した1945年、ソ連軍の侵攻で方正県には約1万人の日本人入植者が取り残され、寒さや病気上で数千人が死亡したり集団自決した。数千人の日本人が生き延びたが、その多くは日本人の親から中国人の家族に託された子供や孤児となった子どもたちだった。
こうした過去は1963年まで忘れ去られていたが、周恩来首相が方正周辺の岡や森から日本人の遺骨を収集して火葬するよう県当局に命じた。遺灰が集められて埋葬され、その場所が後年「中日友好園林」として整備され、日中友好のシンボルとなった。

この日本人公墓は、残留婦人の松田ちゑさんが白骨の山を見つけて、県政府に「私たちが葬りますから許可してほしい」と歎願したのが、周恩来総理まで届き、「開拓民も日本の軍国主義の犠牲者だ」と公墓を建立したのだそうです。その事情は大類善啓さんの「日本人公墓を知っていますか」に詳しく記されています⇒(ここをクリックしてご覧ください)。また、朝日新聞は最近の中日友好園林を取り巻く状況を記事にしています。(参考:
https://globe.asahi.com/article/11605827 )

 

ここまでの話は知っていましたが、県名は「ほうせい」だと思っていました。しかし、そうではありませんでした。同会報ではそのことがつぎのように説明されています。

<なぜ方正(ほうまさ)なのか?>
方正と書けば日本人なら「ほうせい」と呼ぶのが普通だろう。しかし黒竜江省には宝清という県があり、旧満州にいた日本人たちは、「ほうせい」と呼ぶ場合は宝清を指した。その宝清と区別するために、方正を音訓交じりで敢えて「ほうまさ」と呼び、今でもそう読んでいる。戦後も彼の地で過ごした人々にとって方正はあくまでも「ほうまさ」なのである。私たちも彼らの思いを受けて、会の名称を「方正(ほうまさ)友好交流の会とした。

<なぜ『星火方正』(せいかほうまさ)なのか?>
星火とは、とても小さな火のことである。私たちの活動も今は小さな野火にすぎないが、やがて「燎原の火のように方正から平和と人類愛の精神が広まるのだ」という意味を込めて会報の名前にした。

33号には関係者やご遺族らの講演記録やエッセー、エスペラント運動の歴史、さらには全国各地の新聞や雑誌などから豊富なスクラップが掲載されており、読みごたえがあります。中国の一帯一路や戦狼外交に対抗する米国を旗頭とする対中包囲網の展開で、米中日の間にきな臭い情勢が醸し出されようとしている昨今、民衆レベルでの友好運動の推進がとくに重要になっています。同会の活動は貴重です。同会は入会や寄付を呼び掛けています。詳しくは ここ(http://www.houmasa.com/)をクリックしてご覧ください。33号だけでなくバックナンバーのすべての記事973本の概要をご覧いただけます。)【野口壽一記】

 

●方正友好交流会を応援するメール

※この記事を読まれたロサンゼルス在住の鶴亀彰さんが、「方正友好交流の会」理事長の大類善啓さんに次のようなメールを出されました。許可を得て転載させていただきます。皆様もぜひ、寄付や入会をされ「方正友好交流の会」を応援してください。

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方正友好交流の会
理事長 大類善啓様

日本の私の友人が共同運営する「ウェッブ・アフガン」がロサンゼルスに住む私のもとに本日届きました。その中の記事で中国の人々の善意で建立された「方正地区日本人公墓」のことと貴会のことを知りました。私も中国残留孤児の皆さんに関してのニュースなどは何度か聞いたことはありましたが、このお墓のことは知りませんでした。この事実をより多くの日本人に知らせ、同時に中国と日本の人々の友好・親善をすすめる貴会のご活動をとても貴重に思います。

私は太平洋戦争が始まった1941年の生まれで、3歳の時に父が戦死し、国と国との戦争がもたらす悲しみや痛みを感じて参りました。ナショナリズムを超えて個人と個人が思いやり助け合うヒューマニズムが力を持つ必要があると感じています。そのために相手の思いや事情を思いやりの心で聴き合うことが必要ではないかと思っています。その点で貴会の活動に心から共感致します。
近いうちに日本円1000円を入手しお送りし、入会させて頂けたらと思っております。その節はよろしくお願い致します。

鶴亀彰(2022年1月25日)

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『砂嵐に耐えて』

「砂漠の新聞」から シリアの自然と歴史(高畑 滋)

砂嵐が吹き荒れると あたり一面真っ暗になり 土の中にもぐったような感じです
人も羊も 窒息して死ぬことがあるそうです
パルミラでは年間32日間も砂嵐にみまわれます
ここでは何千年も変わらずに 砂嵐にたえてきたのでしょう

著者の高畑さんは1935年生まれ。東京農工大を卒業した後、農林省で関東東山農業試験場をはじめ、北海道農業試験場、林業試験場、草地試験場、熱帯農業研究センター、東北農業試験場などに勤務、一貫して牧野の施業計画の研究に携わり、海外ではインドネシアで熱帯降雨林研究センター、シリアでは国際乾燥地農業研究センター(イカルダ)などで土地利用研究を行いました。本書は、シリアの乾燥地の砂漠に滞在。第1次湾岸戦争の時期に2年間、遊牧のベドウィン族と「科学的な遊牧」を目指す研究を進めながら、日本では絶対に体験できない気候や自然のなかで育つ植生のスケッチや自然、人びとの生活などが軽妙な語り口でつづられています。イカルダでの研究や指導の忙しさのなか現地から日本の友人・知人にあてて「砂嵐に耐えて」現地の様子や生活をレポートした通信紙「砂漠の新聞」34号分からの抜粋です。シリアだけでなくトルコからパキスタン、主には中東の遺跡を訪ね歩いた数二十数か所のレポートが圧巻。パキスタンのパタン族と地元の他部族との抗争で外出禁止令の出ていたクエッタでのエピソードも興味深いものがあります。肩の凝らない中東乾燥地帯の自然と遊牧とシルクロードに暮らす人びとの生活と遺跡=歴史に触れられます。Amazonで購入できます。1500円はお得。

 

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『中国の一帯一路構想』

『中国の一帯一路構想』

日本ビジネスインテリジェンス協会・中川十郎会長
2024年5月2日 <BIS論壇 No.443>

中国の野心的な「一帯一路」に関しては2013年の習 近平国家主席のカザフスタン、インドネシアでの発表以来、かって商社に於いて20年間8カ国に海外駐在し、国際マーケテイング、国際市場開拓に尽力。その後、大学へ転身、30年以上国際マーケテイング、グローバル市場開拓の学術研究、教育に従事してきた者として関心を抱き研究して来た。
また10年前から名古屋市立大学22世紀研究所特任教授として未来予測を研究してきたが実務、理論の両面から中国の「一帯一路」戦略は21世紀の国際市場戦略として画期的なグローバル戦略だと評価している。
すなはち19世紀のパクスブリタ二カ、20世紀のパクスアメリカーナに次ぎ21世紀はパクスアシアーナ、パクスチネーゼ、パクスインジアーナの時代が到来することは確実で、その主要市場はユーラシア大陸が主戦場になることは人口、資源、物流上も自明である。
急速に衰退しつつある日本にとって、発展しつつある一衣帯水の中国の世界市場戦略の「一帯一路」その金融機関たる「アジアインフラ投資銀行」への参加が日本生き残りのためにも必須である。しかるに最近の日本企業、経団連、日本政府の中国敵視政策は上記の動きに逆行しており、米国の中国敵視政策に迎合し、問題である。
早急に日本独自の21世紀の通商政策を確立することが喫緊の課題であろう。しかるに日本のメデイアには中国の「一帯一路」に対する批判が横溢しており、時代の趨勢に逆行していることは誠に慙愧に耐えない次第だ。将来の発展センターたるアジア、ユーラシア大陸での「一帯一路」への日本の積極的な前向きの対応が強く求められている。
「一帯一路}に対する最近の日本のメデイアの批判を以下例に挙げる。『選択』24年5月号での論評は下記通りだ。『中国「巨大事業」は頓挫だらけ』、『東南アジア「一帯一路構想」の大嘘』。「施工率は3割台だ」と報じ批判している。(『選択』24年5月号36ぺージ)。
「中国~ラオス鉄道では総工費60億ドルだが、ラオスでは3割負担で19億ドルはラオス経済にとって大きな負担だ」。『一方、タイにとっては、習政権が仕掛ける「債務のワナ」がどんな結果をもたらすかは、すぐ北隣のラオスではっきり見ることができる』(同上36ページ)。『習政権の空虚なメガプロジェクトは彼らの言う「人類運命共同体」にたとえようのない損失を生み続けているようだ。』(同上 37ぺージ)。
一方、『新財界往来』24年5月号は『「一帯一路」中国の矛盾』、「大陸国家と海洋大国、二兎を追えば破綻する」と見出しを付け、『共産党政権の強権統治の遺伝子を持つ中国は公共性の強い海洋をも大陸的発想で統治しようとする。この手法そのものがすべての国に開かれた海洋が持つ「自由の海」という魅力をそぎ落していることに気が付かない「中国の悲劇」が存在する。』(同誌55ぺージ)。実態をしっかり見極めることが肝要だ。


<21世紀に地球上の政治・経済の中心地域になるユーラシアの現状の見取り図>

『インドの時代到来か』

日本ビジネスインテリジェンス協会・中川十郎会長
2023年1月15日 <BIS論壇 No.404>

毎日新聞社「週刊エコノミスト」は12月27日~1月3日号の『世界経済総予測2023』特集号で「インドの時代の始まり、中国の終わり」。創刊100周年1月17日号で「これから跳ねる!新興国インド経済~人口世界一、10%成長でGDP世界3位に」~高成長のインド、追うインドネシア、べトナム、フィリピン~の特集号を発刊。新年早々、インドの発展に注目している。日経新聞11月14日号は「インド、途上国の盟主狙う~グローバルサウス会合オンライン開催」と報じ、本年9月8~9日インドで開催のG20(20カ国・地域)の議長国を務めるインドの動きを詳細に報じている。インドのモデイ首相はグローバルサウス(南半球を中心とした途上国)の声をG20の議論に反映させると強調。インドは経済成長が続く中、南アジアだけでなく、途上国全体の盟主としての立場を確立しようと、120カ国以上を招待。モデイ首相は演説で「グローバルサウスは未来に関して最大の利害関係を有しており、人類の4分の3以上が私たちの国に暮らしている」と述べたという。

人口14億人台のインドは2023年に中国を抜き、人口世界一となる。15歳から64歳の生産年齢人口は9億5000万人と総人口の7割を占め、消費市場としても、生産拠点としても中国に次ぐ潜在力がある。4年後の27年には国内総生産(GDP)で日本を抜き、世界3位になるとIMFは予測している。『日本企業の今後3年間の事業展開有力国としてインドが中国を抜き、首位に立った。 さらに、2050年までにインドネシアがGDPで日本を抜き、インドに次いで4位となる。『未来の巨大市場」に出遅れまいと日本企業の「インド進出熱」は過熱するばかりだ』、『「世界の工場」と位置づけられてきた中国は米中対立から地政学
リスクが高まっており、リスク分散の観点からも、インドでの「ものづくり」は有効だ』と
「エコノミスト」は1月17日号で報じている。しかし、カースト身分制度など問題もある。
筆者がコロンビア大学留学時ご指導頂いたノーベル賞経済学者・故ロバート・マンデル教授はインドが中国に迫るのにはまだまだ時間がかかるだろうとの慎重意見であった。

このような趨勢下、インドへの日系企業の進出は4000社を超え、日系自動車会社はインドで5割近いシェアーを誇り、特にインド進出で最大の成功例といわれるスズキは新工場での生産を100万台とし、既存の工場を合わせると年間325万台と最大の生産規模になるとみられる。インドは日本の新幹線方式での貨物高速鉄道も日本の支援で建設中である。
日本が注力しているFOIP(自由で開かれたインド太平洋構想=ASEAN10カ国に米、印、豪、NZ. 韓国、日本の16カ国が参加)や、米国のIPEF(インド太平洋経済枠組み=14カ国参加)、QUAD(米国、豪州、日本、インド)などインドは太平洋における重要国として浮上しつつある。さらに将来発展するアフリカと印僑の関係も強固で日本としてはポストチャイナとしてインドとの関係構築、強化にさらに尽力すべきである。BISは32周年記念の本年、インド訪問ミッションを派遣予定だ。興味ある会員各位の参加を期待する次第である。


『鑑真和上 日中学生交流 プロジェクト』に想う

日本ビジネスインテリジェンス協会・中川十郎会長
2022年9月5日 <BIS論壇 No.389>

幾多の苦難を乗り越えて来日し、日本に仏教を広めた鑑真和上をしのび、日中青年・学生の交流に過去14年尽力されている範 云涛 亜細亜大学大学院教授から本年14年目の日中学生交流結団式に招待されたので参加し、挨拶させてもらった。
日中有志のご尽力により、本年4月に建立されたという上野忍が池湖畔の鑑真和上像の前で結団式は挙行された。日中関係者約40名が参加した。
参加者にはとくに日中文化・学術交流、日中若者の親善深化、拡大を目指す日中の若者が多数参加しており、その純粋な熱意に感銘を受けた。
鑑真プロジェクト創設者の範教授は1300年前の鑑真和上がたどってきた足跡をたどり、仏教文化の伝来、遣隋遣唐使の時代を振り返り、シルクロードの歴史のロマンを夢見つつ、鑑真の歴史的レガシーを中国の若者とともに学び、未来志向の健全な日中関係の担い手となる若者を育てるという崇高な目的を掲げておられる。

米中貿易紛争にはじまる米中関係悪化は米国に追随する日本政府の対応も相まって、日中関係は戦後最悪ともいえる状態にある。日本文化の源流は中国にあり、また日中貿易関係は過去最大クラスになっていることにも鑑み、日本は独自の政策で、一衣帯水の日中関係強化、文化、経済関係促進に尽力すべきだと痛感した一日であった。
鑑真は苦難の末に6度目で日本渡航に成功。753年12月18日、屋久島から福岡大宰府へ向かうが暴風で遭難。12月20日に鹿児島の坊津秋月濱に漂着。念願の日本への第1歩をしるした。筆者の故郷の鹿児島大隅半島の高山町(現肝付町)は名勝地 波見の浦を有し、その昔,倭寇の根拠地としても有名で、南方との交易で繁栄を極めていた。港に近い権現山では徐福が不老長寿の薬草を探したとの伝説もある。波見の近くには「唐人町」があり唐との交流の名残との説もある。また高山町には鎌倉建長寺を創設した西蜀出身の蘭渓道隆禅師が1246年に建立した「道隆寺」がある。769年に道教のために大隅に流された和気清麿は波見の浦に上陸。斎藤茂吉「柏原の橋を渡りて相むかう波見の港の古へおもほゆ」と読む。

この町に生を受けた二階堂 進 元自民党官房長官、副総裁は1972年9月の日中国交回復交渉に於いて田中首相の片腕として大平外務大臣とともに尽力された。筆者が高山中学校生徒会長時、PTA会長をされていた二階堂進先生には 以後長年にわたり公私ともにご指導を頂いた。いつも会うたびに国交回復交渉時をしのばれ、「アジアの2大国の日中は仲良くしなければいけない」と強調されるのが常だった。
かって青年時代米国南カリフォルニア大学に留学、国際的な視野で日本のあるべき未来像を考究しておられた二階堂進 先生が今日の冷え切った日中関係を目にされたらさぞかし落胆されるだろう。せめて日中の青年、学生の皆さんが未来志向で日中友好親善交流に頑張ってもらいたいと祈念した一日であった。


『一帯一路と中央アジアの動向』

日本ビジネスインテリジェンス協会・中川十郎会長
2021年11月23日 <BIS論壇 No.359>

中国やロシア、中央アジア諸国、それにインド、パキスタンなどが参加し、中国の広域経済圏構想、「一帯一路」にも加入している諸国が参加する上海協力機構(SCO)首脳会議が9月16日から2日間、タジキスタンの首都、ドウシャンべで開催された。「タリバン」が制圧したアフガニスタン問題も主要テーマになった。SCOは30年前の1991年にソ連崩壊後のロシア、カザフスタン、タジキスタン、キルギスの4カ国と中国が国境策定を目的に会議を上海で開催。開催地の名称を活用「上海ファイブ」が前身である。2001年にウスべキスタンが加盟。SCOとして発足。17年に西南アジアの有力国インドとパキスタンが加盟。

SCOは加盟8カ国で人口は世界の4割。GDPは2割、国土は将来発展が予想されるユーラシア大陸の過半を占める。さらに今回の首脳会議で、オブザーバー国のイランの加盟を認めた。これでSCOの反米色がさらに強まるとみられる。SCOを中心とする中央アジアは21世紀に経済発展が予想され、一帯一路をけん引する地域だ。

中央アジアとともに発展しつつあるASEAN諸国もSCOのオブザーバーとして参加しており、SCOとASEANとの関係も注目する必要がある。中国の習主席は11月22日ASEANとの首脳会議をオンラインで開催。中国、ASEANの対話関係樹立から今年が30周年になることを記念して双方の関係を「包括的戦略パートナーシップ」に格上げすることを決定。

「一帯一路」海のシルクロードのASEANとの関係強化に拍車がかかることになった。中国は長年、中国南部の南寧でも毎年中国、ASEAN見本市を開催。貿易拡大に力を注いでいる。今日、中国はASEANにとって最大の貿易相手国に成長しており、中国はこのASEANを足場にCPTPP(包括的環太平洋経済連携協定)への参加に関心を示している。アジアには華僑、華人4000万人が居住しており、今後中国とASEANとの関係がさらに強化されるものと思われる。11月21日のNHK報道によれば中国はカンボデイアの港湾活用を目指し、タイの運河建設のFeasibility Studyを開始したとのことで、運河建設が実現すればアジア
さらには世界の物流に一大変革をもたらすとみられ、その動向を注目する必要があろう。

一方トルコは11月12日イスタンブールで「チュルク語系諸国協力会議(チュルク協議会・加盟国~トルコ、アゼルバイジヤン、カザフスタン、ウスべキスタン、キルギスの5カ国にオブザーバーにハンガリー、トルクメニスタン~2009年に設立)で「チュルク諸国機構」に改組を決定。トルコは中央アジア諸国のイスラム圏の利益を守ることで、将来発展するこの地域への影響力を強め、ロシア、中国、インド、イランと力を競う戦略とみられる。

一方、中央アジアではロシアもEEU(Eurasia Economic Unionーユーラシア経済連合~ロシア、キルギス、カザフスタン、ベラルーシ)を結成しており、今後、中央アジアをめぐる、中国主体のSCO,ロシアのEEU,トルコのチュルク諸国機構、さらにSCO加盟国、インド、パキスタン、イランなどの協力と競争(Cooperation & Competition)の利害関係、動向に注目することが肝要であると思われる。   以上

 

 

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村石恵照さん、アフガニスタン・セピア色の旅に今を思う。 

いまを去る48年前、村石さんは、インドの仏跡を中心に南アジアを旅されていた。そこからアフガニスタンを訪れ、現在を照射。現代はなにかが問題ではないのか。それを書き留めておられます。
題して、

平和に生きていたアフガン人はどこへ行ったのか?

珍しい写真を見ながら一緒に考えましょう。

【紀行文を読む】

 

 

 

●村石恵照さんと「米中関係の文明的相克」を考える。 

自由と秩序は人類の生態系を維持している矛盾的相互補完の原則である。
自由 (liberty / freedom) は個の利己性を特質とし、秩序 (order) は多の規律性を本質とする。
アメリカは西欧文明の拡張的情念の内に常に二重義性を帯びた自由を上位理念とし、そのような自由と一体になった平等を下部理念の価値観とする移民大国であるが、中国は始皇帝の統一以来万里の長城内に漢文明を維持してきた秩序を大前提とする多民族の人口大国である。

【続きはここをクリック】

 

 

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 山の学校 第4回 現地報告会開催のお知らせ 


とき: 11月27日(日)
● 第一部:山の学校現地報告&今後の支援活動
● 第二部:アフガニスタン情勢について
ところ: 武蔵野公会堂
参加費: 1000円

申し込み&より詳しい情報はここをクリック

 

 

ご挨拶

 2021年1月に2年ぶりの山の学校を訪問しました。学校はコロナの流行で休校になっていたものの、多くの子たちに会うことができました。新設された図書館で補習やコンピューター学習が行われ、未来への光を感じながら帰国しました。しかし、その直後からタリバンの攻勢が激しくなり、州都が次々と落ち、8月15日はタリバンが力ブールに入りました。

ほぼ全国がタリバンの手中に収められましたが、パンシールは地域の自治と政府への参加などを要求し、タリバンと交渉を続けていました。しかし交渉は決裂、タリバンが渓谷に侵入、アフマド・マスードが結成したNRF (国民抵抗戦線)との戦いになりました。タリバンを支援するパキスタン軍のものと思われるドローン攻撃機やジェット戦闘機、ヘリコプターなどが投入され、パンシール川沿いのルハやバザラックなどの主要な地域はタリバンに占領されてしまいました。NRFは山岳地帯に退き抵抗を続けていますが、山の学校があるポーランデにもタリバンが入ってきて、住人はカブールに家族ごと逃れるか、さらに山の上に逃れて行ったと聞いています。学校はもちろん閉鎖され、残っている人も息を潜めている状況です。今までメールを送ってくれていた奨学生のゴラムやバーゼットから疎開先での生活の困難さと財政支援を求める声が届いています。そればかりでなく、パンシールではたくさんの男性が連行され、首都カブールでもパンシール出身者狩りが行われているようです。

彼らの窮状を助けたくても、ほとんどの家族と連絡が取れない状況で、私たちも途方にくれるばかりです。でも、何とか連絡のあった人だけでも支援したいと支援の方法を模索しているところです。人々は戦火が収まれば、必ず故郷ポーランデに戻ってきます。彼らが学校再建や地域再建にとりかかる時、必ずやお手伝いしようと心に決めています。が、心配なのは子どもたち、地域の人々のことです。まずは11月27日の報告会にいらしていただき、より詳しい現地状況に触れていただきたいと思います。

2021年9月26日

長倉洋海
アフガニスタン山の学校支援の会代表

 

 

 長倉洋海さん、アフガン直近訪問レポート 

本サイト「アフガンTips」でも紹介したパンジシールの学校を支援する「山の学校を支援する会」を主宰する長倉洋海さんが6月から7月までコロナ対策の隔離措置をうけながら現地を訪問。成田の隔離ホテルの中から最新報告をアップしました。貴重な最新情報、これは読まなきゃ。
(カーブル空港で帰国前PCR検査を受ける長倉さん)
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新刊写真集『マスード』刊行!
マスードがテロに斃れてからこの9月で20年。マスードに密着してその闘いと人となりを世界に伝え続け、いまもマスードの故郷を支援し続ける長倉さんが新たに「マスードの追悼写真集」を刊行するそうです。豪華本、至高の一冊。
[その詳細はここをクリック]

 

 

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『秘められたシルクロード タジクの黄金遺宝』/日本語版」完成、そして次の新事業へ!

 

2年04月12日付「視点」(028←ここをクリック)で紹介した豪華本『秘められたシルクロード タジクの黄金遺宝』の完成を受けて、休むことなく次の事業(「加藤九祚先生顕彰記念碑」建立プロジェクト)が進められています。その事業の中心を担っている大野遼さんから、進捗状況を知らせるメールが届いています。「読者の声」コーナーでも紹介されていますが、下記に採録いたしまします。ぜひ、ご注目ください。

 

大野遼さんからのメール

=ユーラシア、多様性に敬意し民族の共生を!=

加藤九祚先生生誕100年を5月18日に控え、大野遼は、かすみがうら市牛渡1796-1に「加藤九祚記念ユーラシア共生センター」「加藤九祚先生顕彰記念碑」を建立するプロジェクトを推進し、「タジキスタン共和国と日本の国交30周年」を記念して日本語版が発火された「秘められたシルクロード タジク・ソグドの黄金遺宝 ソグド人パミールから奈良へ」を記念碑に奉納することにしました。

加藤先生から大野が継承した薫陶は、多様性に敬意、民族の共生でした。これまで北方ユーラシア学会、ユーラシアンクラブを創設して体験した40年の活動を踏まえて、人がいかに自分中心でものを考えるものかと痛切に感じることとなりました。
少なくともユーラシアンクラブは、国家民族宗教を超えて、人と文化に関心を示し、敬意を表し、協力することが目的でした。しかし、これまで中央アジアでもロシアでも、他者に関心を示し、敬意を払い、協力するという考えや言葉、活動がいかに広がりにくいかということを体験しました。今回のウクライナでも、イラクでも、リビアでもそしてベトナムでも、挑発し、戦争を引き起こす戦争ビジネスが一番の「共生」を妨げる原因になっていることがますます明らかになっています。このままでは人類に未来はないでしょう。大野は民族主義や愛国主義に敬意を表するものですが、行き過ぎたナショナリズムは、これまで戦争ビジネスを仕掛ける人の挑発を避けることができませんでした。

「真珠湾」が、コミンテルンと結託したルーズベルト一派の挑発に、軍部が乗った結果で、西郷、勝、頭山らの大アジア主義をはき違え、起きたと大野は考えていますが、この時代に自分たちの国家民族宗教的ナショナリズムの境を超えて、多様性に敬意を表し、共生を願う潮流が生まれなくては大変なことになると信じます。ユーラシアンクラブが、単なるナショナリズムを満足させる活動にとどまっていることを心から反省しています。「昔があるから今がある」ということを改めて強く考えながら、ユーラシアンクラブを改革したい。「つなぐ人」加藤九祚先生の志をどう生かせるか、今回の記念碑建立プロジェクトを通して、皆さんと考ええていきたいと思います。

かすみがうら市は、旧常陸国の国府の近くに位置し、コスモポリタンソグド人安如宝が仏教の研修担当として勤務した下野国分寺からも50キロ。ソグド人は、太陽信仰の山パミールから、東へ東へと移動し、揚州から東シナ海を超えて、奈良にわたりそして常陸国まで至りました。常陸国は、文字通りパミールと同じ「日出国」です。ソグド人安如宝の足跡は霞ヶ浦にも残したと考えています。大きなアジア史を体感できる拠点としての活動をここで模索したい。皆様の感想をお聞きしたい。どうぞおいでください。

(大野遼、2020年5月1日)

 

「『秘められたシルクロード タジクの黄金遺宝』/日本語版」シルクロードを理解するのに必携の書

タジクと日本をつなぐ仏教文化の象徴が黄金中央アジアの二つの大河アムダリアとシルダリアに囲まれたソグディアナの中央を東西に流れるソグド川(ザラフシャン黄金の水しぶき)。タジキスタン共和国北部にソグド自治州が。アレクサンダーの東征に最後に果敢に抵抗したソグド人は、中央アジアの基層文化を刻んできた。大乗仏教の東漸、西域シルクロード、日本の基層文化形成にもかかわる中央アジア、シルクロードの歴史と文化理解に欠かせない一冊としてお手元にどうぞ。
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『シルクロードの現代日本人列伝』(発行:三五館)

玄奘三蔵がインドからアフガニスタンを経て中国へ仏典をもたらした道筋としてシルクロードは有名で、国をまたぐ世界文化遺産として2014 年に登録されました。そのシルクロード遺産の発掘と保護に尽くしてきた4人の日本人先達の業績をひもとく文化・歴史ドキュメンタリー。シルクロードに興味ある人、訪れたいと思う人、シルクロードを研究しようとする人にとっての必読書。著者の白鳥正夫氏は、中央大学法学部卒業後、1970年に朝日新聞社入社。広島・和歌山両支局で記者、のち本社企画部次長に転じ、1996年から2004年まで企画委員。この間、戦後50年企画、朝日新聞創刊120周年記念プロジェクト「シルクロード 三蔵法師の道」などに携わる。 著書に『シルクロード 現代日本人列伝』『ベトナム絹絵を蘇らせた日本人』『無常のわかる年代の、あなたへ』『夢追いびとのための不安と決断』『「大人の旅」心得帖』『「文化」は生きる「力」だ!』(いずれも三五館)『夢をつむぐ人々』『夢しごと 三蔵法師を伝えて』(いずれも東方出版)『アート鑑賞の玉手箱』『アートの舞台裏へ』『アートへの招待状』(いずれも梧桐書院)など多数。

本書の執筆にとどまらず、現在もシルクロードやその東の終点・関西の文化について精力的に考察する文章を発表されています。

白鳥正夫さんのページURL:
https://note.com/mahaktyo

「ADC文化通信」→フォルテ文化ミュージアム「アートへの招待」
http://ta-forte.com/museum/

アジアドキュメンタリーセンター「ADC文化通信」
http://adcculture.com/journalist/shiratori-105/

白鳥正夫の「関西ぶんか考」
http://www.area-best.com/osaka/shiratori

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「ユーラシア大陸で花開いた絨毯の魅力」

奇跡の発見! パジリク絨毯の謎

最古のパジリク絨毯はどこで作られたのか?
最も貴重な絨毯といえば、シベリアのスキタイ族の墓から発掘された
パジリク絨毯に間違いないと思われます。

(写真は絨毯発見地・パジリク地方の風景)

<パジリク絨毯の発見>
世界で最も有名な絨毯といえばパジリク絨毯ではないでしょうか?
1949年南シベリアのアルタイ山中のパジリク渓谷でロシア人の考古学者ルデンコによって発掘された200×1.83mの絨毯は、氷のなかにサンドイッチのように埋まっていたために、パイルの状態など保存がとてもよく、絨毯研究者や愛好家の間に強烈な衝撃を与えた歴史的発見となりました。
アルタイ山脈とはロシアや中国、モンゴルやカザフスタンにまたがる、登山などでも有名な巨大な山脈です。スキタイ族の部族長の墓から出土したこの絨毯やフェルトなどは、その後の放射性炭素年代測定調査などでなんと2500年前に織られたものということがわかりました。
日本の古代古墳から出土する埴輪などと同様、族長の死後も快適な生活への願いを込めて埋められた物なのでしょう。シベリアという気候から、堅い氷の中に閉ざされ墓泥棒から2500年間も守られてきたのです。【pdfで続きを読む
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筆者:部族の絨毯と布 triBe 榊 龍昭
〒204-0004清瀬市野塩5-114-1アプリコットプラザ#101
mobile:090-9133-9842
トライバルラグ→www.tribe-log.com