Wakhan and Badakhshan at Asia’s Geopolitical Crossroads
From a Historic Passage and Buffer Zone to a Centre of Geopolitical and Geoeconomic Competition Part-1

 

(WAJ: 本稿のテーマであるワハーン回廊は人口・経済規模こそ小さいが、中国、中央アジア、南アジアが交差する戦略的要衝である。19世紀には英露間の緩衝地帯となり、現在は道路建設、豊富な鉱物資源、安全保障をめぐる大国間競争の焦点となっている。アフガニスタンと中国を結ぶ経済回廊となる可能性を持つ一方、その実現は政治的安定、治安、資源統治、透明性に左右される。ワハーンの将来は、地理・資源・連結性と、米中露印パなど域内外諸国の思惑との相互作用によって決まるだろう。このテーマに基づき今回は3回連載の第1回。なお著者ファテー・サミ氏がこの間、本サイトに執筆した論説のすべては「ファテー・サミ執筆記事一覧」で読むことができる。)

 

ファテー・M・サミ(Fateh Sami):フリーアカデミック研究者
2026年8月30日

第1部
ワハーン回廊(以下ワハーン)とバダフシャーン州(以下バダフシャーン)の歴史地理と地政学的重要性

はじめに

世界の政治地理においては、人口、経済活動、インフラなどの面で周辺的で、比較的重要性が低いように見える地域が、その地理的位置ゆえに、自らの規模や内在的能力をはるかに超える重要性を獲得することがある。アフガニスタン北東部のワハーンは、この現象を最も明瞭に示す事例のひとつである。

一見すると、ワハーンは辺境に位置し、山岳が多く、人口が希薄で、到達も困難な地域である。しかし、中央アジア、南アジア、東アジアの政治地理を、大国間競争の歴史と併せて検討すれば、ワハーンは突如として、地理的周辺部から、複数の戦略圏が接触する地点として姿を現す。

ワハーンの重要性は、道路の長さ、人口規模、あるいは現在ここを通過する貿易量だけでは測れない。その真の重要性は、地理的位置にある。すなわち、細長い領土を通じてアフガニスタンを中国に近接させ、同時に中央アジア、新疆、パキスタン、さらにカシミールを取り巻く広大な地政学的空間にも接近させる位置である。

歴史研究もまた、ワハーンが人口的・経済的には限定された規模しか持たないにもかかわらず、その戦略的位置によって、19世紀後半以降、帝国間競争の舞台となったことを明らかにしている(Kreutzmann, 2023)。

ここから、ひとつの根本的な問いが生じる。
人口的にも経済的にも周辺にとどまってきたワハーンのような地域が、なぜ歴史上のさまざまな時点で大国の関心を集めてきたのか。また、なぜ21世紀に入って、その地政学的重要性が再浮上し、増大し続けているのか。

この問いに説得力のある包括的な答えを与えるためには、ワハーンを孤立した領域としてではなく、バダフシャーンの不可分の一部として捉え、さらにアフガニスタンとその周辺環境という、より広い文脈のなかで検討しなければならない。

ワハーンはバダフシャーンの一部である。したがって、その重要性は、バダフシャーン全体の地理的位置、天然資源、歴史的交通路、国際国境、そしてアフガニスタンの政治的展開との関連において評価されなければならない。

この観点からすれば、ワハーンにおける道路建設は、単なるインフラ整備や運輸事業とみなすべきではない。道路は経済発展の手段となりうるが、戦略的に敏感な地域においては、同時に連結性、貿易、安全保障、影響力、さらには近隣諸国および域外大国間の地政学的関係を再編する手段にもなりうる。

本稿は、この変容を3つの部分に分けて検討する。第1部では、ワハーンとバダフシャーンの地理、歴史、地政学的重要性を扱う。第2部では、道路、天然資源、地域大国および域外大国間の競争を検討する。第3部では、第1部と第2部の知見に基づき、ワハーンとバダフシャーンの将来に関する可能性とシナリオを考察する。

 

ワハーン――小さな地理空間と大きな地政学的重要性

ワハーンは、アフガニスタンのバダフシャーン州北東部に位置し、山岳地帯であるパミール高原を貫く細長い領土として延び、中国、タジキスタン、パキスタンと国境を接している。そこは、複数の重要な地政学的圏域が交差する地点である。

歴史研究は、ワハーンをアフガニスタン、中国、中央アジア、インド亜大陸の十字路に位置づけ、地域間関係におけるその役割を強調してきた(Kreutzmann, 2023)。

ワハーンをアフガニスタン国内からだけ眺めれば、辺境の孤立した地域に見えるかもしれない。しかし、アジア全体の地図上に置けば、まったく異なる像が浮かび上がる。北には中央アジア、東には中国と新疆、南にはパキスタンと戦略的に敏感なカシミール地域、西にはアフガニスタン本土がある。

したがって、ワハーンは、アフガニスタンの地理がアジアの複数の主要な地政学圏と接続する位置を占めている。
この位置関係は、ワハーンの地政学的価値が、必ずしも現在の経済活動の規模によって決まるものではないことを意味する。現在、この地域の商業活動は依然として限定的である。しかし、将来、適切なインフラが整備されれば、同じ地理的位置が、その経済的・政治的価値を何倍にも高める可能性がある。

これは、現実的重要性と潜在的重要性の違いである。現時点において、ワハーンは世界的に重要な経済回廊ではないかもしれない。しかし地理的には、アフガニスタンとその周辺環境を結ぶ重要な接続点となる潜在力を備えている。

 

ワハーンの歴史的重要性――交通路から緩衝地帯へ

ワハーンの歴史的重要性は、近年になって生じたものではない。かつてこの地域は、東アジアと西アジアを結ぶ広範な交通網の一部を形成していた。パミール、バダフシャーン、新疆、カシミール、中央アジアの間に位置することによって、ワハーンは、人々の移動、交易、地域間交流を担う歴史的経路の一部となった。

ワハーンの政治史における大きな転換点は、19世紀におけるロシア帝国と大英帝国の対立であった。この競争は、歴史的に「グレート・ゲーム」として知られている。
この時期、ワハーンの重要性は、単なる地理的通路から、安全保障上および地政学上の問題へと変化した。アフガニスタンは、北方のロシア勢力圏と南方の英領インドの間に位置していた。競合する両帝国は、それぞれの勢力圏が直接接触するのを防ぐため、緩衝地帯の設定と強化を図った。

ヘルマン・クロイツマンによる「ワハーン四辺形」の歴史研究は、19世紀後半以降、アフガニスタン、中国、イギリス、帝政ロシアのすべてが、ワハーンを取り巻く政治秩序の形成に関与したことを示している。グレート・ゲームの時代、ワハーンは競合する勢力圏の間の緩衝空間となった。その後の国境画定によって、最終的にワハーンの地理的形状が確立され、後世に引き継がれたのである(Kreutzmann, 2023)。

この歴史的背景は、今日のワハーンを理解するうえで決定的に重要である。なぜなら、それはワハーンの地理が経済的機会となる以前に、安全保障上および地政学上の資産として評価されていたことを示しているからである。
言い換えれば、大国が最初にワハーンに関心を示した理由は、その地理的位置にあった。経済と連結性に関する考慮は、その後になって各国の計算に組み込まれたのである。

 

グレート・ゲームから21世紀の大国間競争へ

大英帝国が終焉し、中央アジアに新たな秩序が生まれても、ワハーンはその重要性を失わなかった。むしろ、重要性の性質が変化したのである。
ソ連時代、ワハーンはソビエト連邦にとって最も敏感な安全保障環境のひとつに隣接していた。アフガニスタン自体も、冷戦期の大国間競争の主要な舞台となった。

ソ連崩壊後、中央アジアに独立共和国が成立し、その後、アメリカとNATOがアフガニスタンに大規模に展開したことによって、ワハーンを取り巻く安全保障環境は再び変化した。
したがって、ワハーンの近現代史は、ひとつの連続した鎖として理解できる。ロシアとイギリスのグレート・ゲームにおいて、ワハーンは緩衝地帯として重要性を獲得した。冷戦とアフガニスタン戦争の時代にも、安全保障上の重要性は持続した。そして、中国が経済・安全保障大国として台頭し、ロシアの役割が変化し、ターリバーンが政権に復帰し、地域内外の競争が激化するなかで、ワハーンは再び地政学的計算における重要性を増している。

この歴史的連続性は、ひとつの重要な点を明らかにしている。すなわち、アフガニスタンを取り巻く権力構造が変化するたびに、ワハーンは地政学的計算のなかに再び登場してきたのである。

今日では、米中競争、ロシア・ウクライナ戦争、中央アジアにおけるロシアの役割の変化、インドとパキスタンの対立に加え、イラン、アメリカ、イスラエルを巻き込んだ継続中の戦争も、アジアの地政学的構図を左右する重要な変数となっている。この紛争は、2026年2月28日のアメリカとイスラエルによるイラン攻撃によって始まり、エネルギー、安全保障、地域関係に影響を及ぼした。それは、中央アジアとワハーンを取り巻く戦略的計算にも、間接的な影響を与える可能性がある(Council on Foreign Relations, 2026)。

こうした状況のもとで、ワハーンが再び注目を集めるのは当然である。
しかし今回の競争は、必ずしも領土の獲得をめぐるものではない。むしろ、アクセス、連結性、安全保障、資源開発、貿易、影響力を中心に展開される可能性がある。

 

ワハーンと「連結性の力」という概念

ワハーンの将来を理解するうえで重要な概念のひとつが、「連結性の力」である。

19世紀の大国は、主として領土と国境の支配を追求した。21世紀においては、領土の直接支配は、権力の一形態にすぎない。道路、鉄道、港湾、パイプライン、エネルギー網、貿易路、デジタル回廊もまた、権力の手段となりうる。

この観点に立てば、ワハーン道路は象徴的かつ戦略的な重要性を帯びる。ワハーンを通る道路がアフガニスタンと中国を結ぶことに成功したならば、それは単に数キロメートルのインフラが新たに建設されたことだけを意味するのではない。
必要な安全保障上および経済上の条件が整えられれば、この道路は、より広範な地域連結網の一部となる可能性がある。しかし、鉱山契約に関する監視、透明性、説明責任、国民による情報へのアクセスを保障する実効的な制度が存在しなければ、インフラ開発は経済的機会をもたらす一方で、不透明な資源採掘、密輸、天然資源の不均衡な収奪という危険を増大させる可能性がある。

実際、一部地域で不透明な鉱山開発が継続していることは、経済的・行政的な影響にとどまらず、ターリバーン内部の諸派閥、とりわけ地元バダフシャーン出身勢力とカンダハール系勢力との間で、公然と報道される対立や衝突を生み出している。
同時に、道路が存在するだけで、大規模な国際回廊が成立するわけではない。極端な高地、厳しい気候条件、山岳地形、インフラ維持費、安全保障上の懸念は、いずれも重大な制約となる。

2026年6月に『Pacific Focus』誌に掲載された研究も、この相違を強調している。同研究によれば、ワハーンはアフガニスタンと中国にとって、同一の戦略的重要性を持つわけではない。
アフガニスタンにとって、ワハーンを通じた連結性は戦略的・経済的重要性を持ちうる。他方、中国は依然として、安全保障を経済的連結性拡大の前提条件とみなしている。この観点からすれば、両国にとってのワハーンの戦略的重要性は非対称的である(Bazwan and Omarkhail, 2026)。

この相違は、ワハーンの将来を分析するうえできわめて重要である。

 

資源豊かな自然環境に位置するバダフシャーンとワハーン

ワハーンとバダフシャーンは、この地域の天然資源を考慮せずに評価することはできない。
バダフシャーンは、天然資源という点で、アフガニスタン有数の地域である。アメリカ地質調査所による地質・鉱物調査は、同州に多数の鉱床および鉱物徴候地が存在することを明らかにしている。また、バダフシャーンの金鉱地帯についても、専門的な研究が実施されてきた(Peters et al., 2011; Peters et al., 2014)。

アメリカ地質調査所によるバダフシャーンの地質図は、同地域の地質構造とともに、金属・非金属鉱物の分布を検討している。ウェカ・ドゥル金鉱床に関する専門研究も、この鉱床がバダフシャーンに広く分布する一群の含金鉱床の一部であることを示している(Peters, Stettner and Masonic, 2014)。

バダフシャーンのラピスラズリも、独特の歴史的・経済的重要性を持つ。ラピスラズリは、金、宝石、その他の鉱物とともに、同州が持つ広範な鉱物資源の潜在力を構成している。
したがって、バダフシャーンの重要性を、国境上の位置だけに還元することはできない。ここでは、2つの重要な要因が交差している。
すなわち、地理的位置と天然資源である。

この2つの要因が、交通インフラおよび投資と結びつけば、この地域はより大きな地経学的重要性を獲得しうる。
ここで、第2部において鉱山問題がとりわけ重要となる。中心的な問いは、単に「バダフシャーンにどのような資源が存在するのか」ではない。
より重要な問いは、誰がそれらの資源にアクセスするのか、どのような制度のもとで採掘されるのか、収益はどのように分配されるのか、そして資源採掘が地域大国間の競争におけるアフガニスタンの立場にどのような影響を及ぼすのか、ということである。

また、実効的な国民監視と説明責任の制度が存在しないなかで、インフラ開発が持続可能な発展につながるのか、それとも経済的機会と並行して、不透明な資源採掘と国家資源の不平等な収奪を招く条件を生み出すのかについても、問わなければならない。

 

ワハーン――アフガニスタンの地理とアジアの地政学的競争が交わる場所

21世紀のワハーンは、多層的な地政学的環境のなかで研究されなければならない。
一方には中国が存在する。中国は、外交政策において、西部国境の安全、新疆の安定、地域連結網の拡大を重視する大国である。ワハーンに関する最近の研究も、中国がこの地域への対応において、経済開発と連結性よりも安全保障を優先していることを示している(Bazwan and Omarkhail, 2026)。

他方にはパキスタンが存在する。パキスタンは、カシミールの地理と自国北部の国境を通じて、ワハーンを取り巻く広範な環境とつながっている。
インドも、パキスタンとの長年の対立、カシミール紛争、中央アジアとの広範な関係ゆえに、この地域の動向を完全に無視することはできない。

アフガニスタンの直接の隣国であるタジキスタンも、国境の安全、アフガニスタンの安定、パミール地域の情勢と直接的に関係している。

イランはワハーンと国境を接してはいない。しかしバダフシャーンは、ペルシア語圏との歴史的・文明的つながり、ならびにアフガニスタンと中央アジアに関するイランの地政学的計算という、より広い枠組みのなかで研究することができる。
もっとも、この文化的つながりは、それ自体として統一された政策や直接介入の存在を意味するものではない。それは、安全保障上および経済上の要因とともに考慮すべき、ひとつの背景的変数である。

ロシアも、中央アジアにおける歴史的・安全保障上の役割ゆえに、アフガニスタンと中央アジア南部国境の動向をきわめて敏感に注視している。

域外レベルでは、アメリカが依然としてアジアの権力構造における重要な主体である。ただし、アフガニスタンに軍事駐留していた時期と比較すれば、その関与の性質と使用する手段は大きく変化している。

したがって、ワハーンをアフガニスタンと中国の関係だけによって研究することはできない。ワハーンは、はるかに複雑なネットワークの一部を構成している。

 

中国―ロシア―アメリカ―インド―パキスタン―イラン―タジキスタン―アフガニスタン

しかし、これらの国々が同一の目的を共有しているわけではない。まさに、この利害の相違こそが、ワハーンを地政学的分析にとってきわめて有用な研究対象にしている。

 

地理的重要性から地経学的重要性へ

本研究の中心的な問いのひとつは、ワハーンが潜在的に重要な地政学的位置から、現実の地経学的資産へ移行できるかどうかである。
その答えは、以下の複数の変数に左右される。
1. 交通インフラの整備
2. 経路沿いの安全保障
3. アフガニスタンと中国および近隣諸国との関係
4. 地域貿易の能力
5. 輸送費
6. 天然資源の採掘と加工
7. アフガニスタンの政治的安定
8. 投資を可能にする法的・経済的制度
9. 地域大国間の競争または協力
10. 中国、ロシア、インド、パキスタン、アメリカの将来政策

したがって、ワハーンの将来的重要性は、あらかじめ決定されているわけではない。
ワハーンは地政学的な「可能性」であって、あらかじめ定められた地政学的「結果」ではない。
インフラ、安全保障、貿易、資源統治が一体的に発展すれば、その重要性は増大しうる。しかし、不安定、政治的孤立、高額なインフラ費用、否定的な競争が支配的となれば、地理だけではワハーンを主要な経済回廊へと変えることはできない。
この区別が、本研究で採用する分析方法の基礎を成している。

 

中心的研究課題

以上の議論に基づけば、中心的研究課題は次のように定式化できる。
ワハーンとバダフシャーンは、その地理的位置、歴史的背景、天然資源、インフラ開発を踏まえたとき、形成されつつあるアジアの地政学的・地経学的秩序において、どのような役割を果たしうるのか。また、地域大国および域外大国間の競争は、この地域の将来をどのように形づくるのか。
この中心的課題に加え、複数の副次的な問いが生じる。

ワハーン道路は、アフガニスタンを重要な地域連結路へと変えることができるのか。
バダフシャーンの天然資源は、経済発展の源泉となりうるのか。それとも、競争の激化と不透明な資源採掘の原因となるのか。
中国はワハーンを、主として経済的機会とみているのか。それとも安全保障上の懸念とみているのか。
インドとパキスタンは、この地域の地政学的変化にどのように対応するのか。
中央アジア周辺における中国の影響力拡大に対して、ロシアはどのような政策を採用するのか。
アメリカが中央アジアに対する戦略を再び変更した場合、どのような役割を果たしうるのか。
そして最後に、次の問いがある。

ワハーンは最終的に、経済回廊となるのか、安全保障地帯となるのか、大国間競争の舞台となるのか。それとも、これら3つが複合した地域となるのか。

 

予備的仮説

本研究の予備的仮説は、次のとおりである。
ワハーンの将来的重要性は、単一の要因から生じるものではなく、地理的位置、天然資源、連結性の潜在力という3つの基本的要素が収斂することによって生じる。しかし、その潜在力がどの程度実現するかは、安全保障、政治的安定、資源統治、地域大国および域外大国間の競争に左右される。

この観点からすれば、ワハーンは、アフガニスタンの周辺地域から、内陸アジアにおける重要な地政学的・地経学的結節点へと発展する可能性を持つ。
しかし、このような変容は必然ではなく、国内主体と国外主体双方の行動に左右される。

 

結論

ワハーンは、現在の経済指標だけに基づいて評価することはできない。その主要な価値は、地理的位置と、それによってアフガニスタンと周辺環境との間に形成される関係にある。

ワハーンの歴史は、この地域が、その地理的位置ゆえに、過去においても大国の計算に組み込まれてきたことを示している。グレート・ゲームの時代には、競合する帝国間の緩衝地帯となった。冷戦期にも、その安全保障上の重要性は持続した。そして21世紀には、中国の台頭、ロシアの役割の変化、インドとパキスタンの対立、アメリカの政策転換によって、再び地政学的関心を集めている(Kreutzmann, 2023)。

しかし、今日における重要な相違は、地理がインフラおよび天然資源とますます密接に結びついていることである。
道路、貿易、鉱物資源、安全保障を持続可能な枠組みのなかで統合できれば、ワハーンは、より大きな経済的・戦略的重要性を獲得しうる。そのような条件が成立しなければ、その重要性は主として安全保障上および地政学上のものにとどまる可能性がある。

ここから、第2部の中心的問題が始まる。それは、ワハーン道路、バダフシャーンの天然資源、そしてこの地域の地理を利用して、自らの安全保障上、経済上、地政学上の利益を増進しようとする諸大国間の競争である。

したがって、ワハーンは、単なる辺境の国境地帯としてではなく、潜在的な地政学的・地経学的資産として理解すべきである。その将来は、地理、インフラ、資源、統治、地域大国および域外大国間の競争の相互作用によって決定される。

――続く――