(2024年4月5日)
アフガン日本語学校開校に向けて支援のお願い
~異文化共生から融合への取り組み~
想定外の学ぶ意欲
昨年11月4日、千葉市で在日アフガン女性向けの日本語教室が活動を開始した。学校法人千葉明徳学園の施設を利用したイーグルアフガン明徳カレッジ(Eagle Afghan Meitoku College:
以下EAMC)だ。(開校の様子はココをクリック)
学校の名称は、NPO(特定非営利活動法人)イーグル・アフガン復興協会が学校法人千葉明徳学園の施設を借りて出発したから。『ウエッブ・アフガン』を通じたつながりがきっかけとなったこの事業の目的は、以前から日本に難民として居住している、あるいはターリバーン復権後日本に避難してきたアフガン女性らへの日本語教育と生活支援。両法人も実際にカレッジを運営する日本語の先生方も事務方もすべて非営利のボランティアによって開始された。(いきさつはココの金子編集委員のつぶやきに詳しい)
当初は、ニーズは間違いなくあっても生徒が何人集まってくるか不安だった。女性単独での外出、学習する習慣は、日本に移住・避難してきていたアフガン人社会でも現地同様不自由だったからだ。
だがその心配は、初日に裏切られた。なんと生徒が27人子供が15人やってきたのだ。さらに翌週の11月11日にはそれぞれ29人と21人。そして11月18日、41人と30人。ここにきて、当初1教室だったのを、学園に要請して2教室に増やしてもらった。それまで子供のために借りていた遊戯室を加え3教室、および隣接する幼稚園の園庭を使わせてもらう、本格的な教育環境が揃った。引き続き11月25日、30人と25人。12月9日、40人と20人。12月16日、30人と17人。12月23日、33人と27人。
大人の受講生が41人を超えた11月18日には、講義内容、保育環境を維持できないとして40人までと人数制限を設けた。しかし受付を締め切っても、毎回、新規の受講希望者がやってきた。さらに、受講生には学園までの交通費(電車代および車で来る人にはガソリン代)を支給していたが、12月でそれはやめて1月からはすべて自弁で来てもらうことにした。
だが、1月になっても目立った受講生の減少はなかった。受講生は30人前後、子供は20人前後を維持した。その結果、試行期間の最終日と位置づけた3月23日までの全17回の延べ総数は、受講生520人、子供352人(平均、大人30.6人、子供20.7人、ほかに乳児述べ14人)となった。ボランティアの日本語教師は延べ75人(平均4.4人)、通訳は12人(平均0.7人)。保育者は66人(3.9人)。事務局員を含めるとこの17回で日本語教室事業にかかわったアフガン人日本人の総数は1113人(65.5人)となった。
アフガニスタンでは実現できなかった事業
アフガニスタン現地では、日本で言えば6年生にあたるまでの初等教育以外、女性の教育は基本的に禁止されている。千葉での教室は、日本で生活していくために最低限必要な日本語と生活支援だ。だから女性への教育ニーズに全面的に応えられているわけではない。しかも週2時間でしかない。
ところが、参加者にとっては、ちゃんとした学校にこられる。千葉明徳学園のキャンパスは彼女らにとってアフガニスタンにいては足を踏み入れることもできないあこがれの「学校」だった。アフガニスタンでは「学校に行きたい」と主張し続けて、学校に行けないよう足にお湯をかけられたという受講生すらいたほどだった。泣いてよろこびを表す受講生が何人もいた。
しかも、託児サービスが設けられ、勉強をしているあいだ子供の世話から解放される。さらに普段会うことも難しかったアフガン女性同士が机を並べて勉強できる。彼女らには一種の解放されたサロン的な喜びも提供することとなった。
加えて、子供たちは、充実した遊具や玩具、ピアノなどを保育者つきで触れることができ、楽しい2時間となった。学校の宿題をもってきて教えてもらう子供も出てきた。
反響
この学校事業は口コミだけで静かにスタートした。なぜなら、千葉県には直近の政府統計で2110人(一説には3000人に達する)というアフガン人コミュニティがある。その現状はアフガニスタンと変わらず、外出や衣装の制限が依然としてあり、教育への嫌悪が厳然として存在しているからだ。うわさが独り歩きすればどのような妨害があるかわからない。教室に通ってくる女性は家庭で夫を説得してやってくる。
教室が回を重ねるにしたがって取材要請が来るようになった。取材そのものはありがたいことには間違いないが、上に述べたアフガン社会の制約がある。取材者にはそのむね重々承知してもらい、写真の撮影や表現などに最新の注意を払ってもらった。そのような要請をうけて、主なものだけでも;
朝日新聞千葉版/公明新聞/NHK WORLD、NHK WEB/毎日新聞/TBSラジオなど
が報道してくれ、学校の主宰団体であるイーグル・アフガン復興協会の江藤セデカ理事長には、学校法人千葉明徳学園が、教職員・役員向けおよび短大学生向けに2回の講演会を開催してくれ、他の団体からも後援やインタビューの依頼が来た。アフガン社会からは妨害はなく、受講生の家族からは感謝の声すら届くようになった。
システム化の模索
昨年11月から3月までの17回の教室は、試行期間との位置づけだった。それは、「アフガニスタンの女性と子供に教育の機会を提供し、生活の支援をしたい。また、母国の事情を知らずに育つ子供たちに母国語や伝統、歴史を教えたい」という江藤セデカ理事長の想いを形にするためだった。というのは、イーグル・アフガン復興協会はほとんどといってよいほど、理事長であるセデカさんの個人的な頑張りで運営されてきたし、支援するわれわれもほとんど手弁当のボランティアだったからだ。
どこまでやれるかわからない、でも、やりたい人、受けたい人がおり、そこに人道的な要請があるのなら、やってみようじゃないか。そういったボランティアの人びとが何十人も集まってくれ、スタッフも入れれば毎回十数人がかかわってくれるようになったのである。
日本語の先生たちもそれまでアフガン人に教えたことのある人は皆無。他言語話者への教育経験をフル動員してアフガン人にあたる。スタッフの中でダリ語が分かるのは数名しかいない。アフガン音をカタカナに移すのは技術的に無理がある。身分証明書の確認も一仕事。受講希望者の総数は100名に達した。その子供たちもいる。名簿ひとつ作るのも大変だ。育児はいくらか楽だった。というのは、子供たちは最低限の日本語会話ができるからだ。
毎週定期的に数十人規模の教室を運営するための事務作業は結構大変だ。授業で使う教材を購入したり、コピーをつくったり、教材の準備はばかにならない。子供たちの遊具費やお菓子代も不可欠だ。現在では先生や保育者には交通費だけは支給できるようになった。交通費をねん出できない受講生には生活支援金の一部として交通費を支給している。
この半年間は、理想と理念の現実化、実践によるそのシステム化の模索だった。
現在は、4月13日の正式開校、始業式に向けて学生証の作成や受講制限で待機となっていた希望者への連絡や講義内容の準備など、スタッフは休みなく活動している。すでに新年度40回の開校日スケジュールが発表されている。(ココをクリック)
なぜこの事業が大事なのか
現在日本には322万人の在日外国人がいる。さまざまな理由で日本に滞在している。周知のように日本社会は人手不足、とくにハードな業種、3K現場では深刻だ。そのような産業界では外国人労働力がどうしても必要で導入に積極的だ。それ以外にも日本をめざしてやってくる外国人は増加傾向で、関係機関では人口の1割が外国人という時代が来るとのシミュレーションも喧伝されている。
本サイトでは、<視点:089>〝ワラビスタン〟から見えるもの ~日本の現状と将来を測るリトマス試験紙~で取り上げたが、日本への国外からの移住者が増えてくれば彼らは当然にもコミュニティをつくる。日本社会がそのコミュニティを放置すれば当然のこと隣接する地域で摩擦が生じる。
EAMC活動は、アフガン難民だけでなく、日本に移住して日本で生活することを目指す家庭への支援も視野に入れている。アフガン人の側からも、日本で生活していくために必要な知識や日本のルールを習得したいという要望がある。日本の側がそれらの要望に応え、支援していかなければ彼らの困難を放置することになる。子供たちの教育、生活指導を彼らだけに任せておけば、悪の道に走る子供たちもでてくる。日本社会での教育問題と同じ問題が彼らのなかにも存在しているのだ。
国際人道法や離散家族の支援など、国が批准した国際協定や条約がいくつもある。しかし、そのような外的な強制でなく、人としての仲間、自分の一部としての隣人として外国人と付き合っていく必要があるのではないだろうか。
千葉でのこの活動には日本人・アフガン人という区別を超えて共生していこうという意欲が生まれてきている。この活動が続いていけば、お互いの文化交流をベースに新しい形の文化が生まれてくる可能性がある。かかわっているボランティアの側も喜びをもらっている。
支援のお願い
NPO法人イーグル・アフガン復興協会は2003年に設立された。定款上の目的は「アフガニスタンに対して、衣類や文房具、医療品等の不足している物資の支援、アフガニスタンの復興を促すための職業訓練学校の建設等に関する事業を行い、アフガニスタンの人々の生活安定を図ることで、民族同士が共存できる平和な社会の実現に寄与することを目的とする」としている。理事長の江藤セデカ氏はアフガニスタンや中東地域との貿易事業を行いその収益や、会費や寄付によって目的実現につとめてきた。
今回の事業にあたっては、昨年10月にNPO法人「警備人材育成センター」(松浦晃一郎理事長)が月額10万円の年間支援を決め、実施してくれたことが大きく貢献した。(詳細はココをクリック)。さらにまた今年度もその継続を約束してくれた。(2024年3月27日贈呈式挙行)
また、毎日新聞の特集記事(URL)をみて、匿名者から避難民の生活支援にとして100万円の寄付があった。それ以外にも、学校開始にあたって口コミで寄付の要請をおこなった結果、数十万円が集まった。これらを原資として学校運営に充てられる資金をこの6カ月のあいだ当ててきた。江藤セデカ理事長には、受講生には交通費だけでなく奨学金も出したいという希望がある。日本では義務教育は無償だし大学教育無償化さえ制度化の議論がされている。教育は国家国民の責務であるけれど、突き詰めれば人が人として生きて行くうえでの「義務」なのである。
いまそこまでの理想の実現は無理だが、EAMCは来年度40回の開講を予定している。さらに、卒業までの3年間の授業内容も検討中だ。長丁場だし、途中でやめるわけにはいかない。この事業を支える先生方、保育担当者および事務スタッフには、最低限のギャラを支給できるようにしなければならない。そのうえで、受講生への学習に必要な金銭的な支援も行えるようにしたい。
イーグル・アフガン復興協会は、これまでの活動を一回りも二回りも強化拡大して、公的私的をとわず積極的に寄付をあつめ、事業継続の基礎を固めたいとしている。われわれ『ウエッブ・アフガン』もNPO法人 イーグル・アフガン復興協会と一体となってこの事業の成功のために邁進したい。
読者の皆さんの、これまでにも増したご支援を切にお願いする次第です。
なお、寄付金のお申し出およびお問い合わせは;
● ウエッブ・アフガン問い合わせコーナー:https://webafghan.jp/postandq/
● イーグル・アフガン復興協会メール:eagleafghantokyo@gmail.com
● 今すぐ寄付したい方は下記口座にご入金ください。
■三菱UFJ銀行■
店番: 051 (四谷支店)
口座番号:1117116
口座名:イーグル・アフガン復興協会
■ゆうびん振替口座■
口座記号:00150-0
口座番号:551990
口座名:イーグル・アフガン復興協会
※ イーグルアフガン明徳カレッジ情報は下記をご利用ください。
・イーグルアフガン明徳カレッジ(eamc) Facebookページ
【野口壽一】