Normalizing Terrorism; Taliban Disappoint Moscow, Beijing, and Tehran as Well
テロリズムの常態化:ターリバーンはモスクワ、北京、テヘランをも失望させる

(WAJ: この論説の結論として筆者は「テロはいつかモスクワ、北京、テヘランにも襲いかかるだろう」と断言している。その4日後、カンダハール、カーブル、モスクワでISによるテロが実行された。(本サイトのトピックス3月22日、23日の記事を参照)。本サイトではターリバーンの復帰(2021年8月)後、つねにその危険を警告し、昨年6月には「ターリバーンに関する国連安保理報告」、9月には「<緊急レポート>もうひとつの9.11に備えはできていますか?」とするノルウェーでの一アフガン女性のハンガーストライキによる警告を掲載した。ターリバーンをデファクト・オーソリティ(既成政府)として承認する動きがみられるが、そのような認識が如何に甘く危険なものであるか、アフガニスタン人は警告を発し続けている。)

 

By: Sorkh Kohi
Hasht-E Subh Hasht-E Subh 18 March 2024

ソルフ・コーイ
ハシュテ・スブ(アフガニスタンの独立系ジャーナル)

 

ロシア、中国、イランなどの国々は長年にわたってターリバーンとの関係づくりに努めてきた。これらの国の代表者は、あらゆる国際集会でこのテロ集団と関与する必要性を強調し、国連制裁の解除と米国によるアフガニスタンの凍結資産の解放を要求してきた。ロシアの国連常駐副代表(訳注:ドミトリー・ポリャンスキー)は最近の発言の中で、UNAMA(訳注:国連アフガニスタン支援ミッション)の任務延長決定を歓迎し、「状況の包括的かつバランスの取れた評価とターリバーンとの建設的な相互作用がなければ、アフガニスタンにおける持続可能な平和の達成は不可能である」と述べ、さらに「ターリバーンとの建設的な交渉以外に選択肢はない」と語った。

<参考サイト>
https://press.un.org/en/2024/sc15612.doc.htm

 

パキスタンはかつてターリバーンのためにロビー活動を行っていたが、現在ではこのテロ組織への本格的な支援がもたらす破滅的な結果を感じている。それに代わっていまはロシア、中国、イランがその役割を担うようになっている。 3カ国はいずれも、主要なテロ集団が存在するアフガニスタンの現在の壊滅的な状況を正常化することを目指しており、なにかというと、アメリカと西側諸国が現在のアフガニスタン危機の主犯であると主張している。

アフガニスタン危機において米国が重要な役割を果たしているのは疑う余地がないし、無視されるべきではない。しかし、否定できないのは、アフガニスタンに対するターリバーンというテロ集団の破壊的支配である。テロ集団は2年以上にわたり、アフガニスタンの住民にとってのみ明々白々な残虐行為を災害的規模で犯してきた。ロシアや中国やイランの権力は常に自らの経済的、政治的、安全保障的な利益に基づいて意思決定を行い、アフガン国民および彼らを支える国々の福祉や利益をないがしろにしてきた。しかしやがて、これらの国々はターリバーンへの対応における自らの誤りに気づくことになる。ターリバーンはイスラマバードを失望させたが、それと同様にモスクワ、北京、テヘランも失望させる。ロシア人、中国人、イラン人がこれを理解していないなら、パキスタン人に尋ねるべきだ。イスラマバードの代理勢力としてのターリバーン支援は、モスクワ、北京、テヘランの支援よりもはるかに長い歴史があり、まさにターリバーンが活動を開始したときまで遡る。20年にわたる米国のアフガニスタン駐留中、ターリバーンはさまざまな分野でパキスタンから無条件支援の恩恵を受け、権力基盤としては最終的にパキスタンを頼った。

しかし、アフガニスタンの支配権を掌握すると、ターリバーンはパキスタンの予想に反して自らの道を追求しはじめた。再び当集団を統制し抑制しようとするパキスタンの努力は、これまでのところ良い結果をもたらしていない。それどころか、カーブル政権はパキスタン・ターリバーン(TTP)を丸抱えして、イスラマバードにとってのアフガニスタン戦争の勝利を苦々しいものにした。この苦い思いは非常に深刻である。そのため、パキスタンはターリバーンのために国際的なロビー活動を行うことをやめ公式承認の努力を控えると決めた。現状のターリバーンをがっかりさせる一手だ。カーブル政権を公式に承認している国はひとつもない以上、パキスタンの決定はターリバーンの外交的孤立を強めている。しかし、ターリバーンは狂信的な思想集団として自らの思想信条を何よりも重視しているため、パキスタン・ターリバーン(TTP)を鎮圧するようにとのパキスタンの要請には応じておらず、今後も応じる可能性は低いと思われる。

アフガニスタン・ターリバーンとパキスタン・ターリバーンは民族やイデオロギーの点で切り離せない関係にあり、そのためターリバーンにTTPへの弾圧を期待するのは短絡的な考えであり、両ターリバーンに対する浅はかな理解にもとづくものにほかならない。アフガニスタンのターリバーンが万一圧力に屈してとる唯一の行動は、TTPメンバーをパキスタンとの国境地域から遠ざけ、アフガニスタンの北部、西部、中部の各州に移住させることだろう。しかしこれとて恒久的あるいは確実な解決策ではない。TTPメンバーは、以前よりもさらに強力な政治的力量を獲得して国境地域に戻ることもできるし、北部、西部、中部の各州からパキスタン領土内でのテロ攻撃を組織することもできる。それにもかかわらず、アフガニスタンのターリバーンは、TTPメンバーを北部、西部、中部の各州に再配置するというこの計画ですら、当初想定されていたほどの強度と厳格さで実施しておらず、すでに停止されている可能性さえある。

ターリバーンは自分たちのイデオロギーだけに忠実だ。このイデオロギーは、宗派主義、パシュトゥーン民族主義、犯罪経済、テロリズムの組み合わせであり、弁証法的な関係において相互に再生産される。このイデオロギーの中心的要素はテロリズムであり、イデオロギーの他の要素を維持し、促進することができるツールもテロリズムだ。ロシアの国連副代表が語る「ターリバーンとの建設的な関与と実際的な行動」は、テロリズムを温存し強化する取り組みにほかならない。本格的なテロ集団に協力することとは、これ以外に意味があるのだろうか? しかし、ロシア、中国、イランは、アフガニスタンのターリバーンを支援することでテロリストたちと戦うことができると信じている。これら3カ国は、そのテロリストたちが米国によって支援されていると考えている。

ロシアとイランの当局者は、米国人がISISを支援していると繰り返し非難しており、ターリバーンはISISとの戦いにおいて信頼できるパートナーであると信じている。言い換えれば、ロシア人とイラン人はテロに対して別種のテロを支持しているということだ。 それは「悪いもの」を「より悪いもの」から守るという現実主義的な論理に基づく戦争。この理論的枠組みでは、ターリバーンは「悪い」ものとみなされ、ISISは「さらに悪い」ものとしてみなされる。この政治的現実主義は国際政治に共通して定着しており、すべての政府がこれを遵守している。しかし、現実主義的な傾向の問題点は、戦略的な視点が欠けていることであり、短期的な解決策しか提供できないことだ。主要な問題は未解決なままにされるばかりか、以前にも増してはびこる。ターリバーンがロシア、中国、イランの支援を得てISISを完全に撲滅できたと仮定しよう。しかしターリバーンの問題はどうなるだろうか? ISISを弾圧する前は「悪」だったこのグループは、その暁には非常に強力になり、もはや悪ではなく、「最悪」となっているだろう。したがって、ターリバーンによるISISの弾圧はテロを撲滅できないどころか、テロをこれまで以上に活発化させることになる。ロシア人、中国人、イラン人は「ターリバーンとの建設的な関与と実際的な行動」の形成に全力で取り組んでいる。しかしそれはテロを常態化し、永続させることにほかならない。テロはいつかモスクワ、北京、テヘランにも襲いかかるだろう。

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