2026年9月6日
野口壽一
2000年に「導電性ポリマーの発明と開発」でノーベル賞を受賞された白川先生が8月24日に亡くなられた。
それまで絶縁体とされていたプラスチックが電気を通すとは常識を根底から覆す大発見だった。プラスチックは金属より軽く柔軟で加工もしやすく、電子部品、ディスプレイ、エネルギー分野、医療・バイオなど、極めて幅広い範囲で実用化・研究開発がなされている。スマホやタブレットなど小型軽量が求められるデバイスでは必須である。
白川先生には特別の想い出がある。
蔵前工業会(東京工業大学(現東京科学大学)同窓会)の理事をしていたころ、2007年10月20日に蔵前工業会主催でひらかれた、写真にある、白川英樹先生の講演会に蔵前工業会を代表して出席する栄誉に浴したことがある。

講演会の目的が、子供たちと親にやさしく科学技術の重要性および発見とはなにかを伝えることだったので、実に平易で講演を聴く子供たちにも楽しいイベントとなった。

先生は、まず、講演のタイトル「セレンディピティ」とはなにかについて話された。
発見とはみじかに起きるさまざまな現象、とくにふとした偶然や失敗をきっかけに、意図していなかった価値ある発見や幸運を掴み取る能力のことです、と。
ある日、実験中、真っ黒だがキラキラ金属のような光沢をもったプラスチックが生成された。合成を担当していた学生が、触媒の比率を間違えたのだ。普通なら「しっかりしろよ」と叱るところだが、外見が金属にみえるから、試してみたら電気が通るではないか。がぜん先生の研究者魂に火がついた。それが大発明の端緒だった。歴史的な大発明のほとんどはセレンディピティ=探究心や深い知識を持ち、偶然の出来事の意味に気づいて活かす力からうまれたのだ、というのが先生の信念。
さらにプラスチックの導電性の説明に移った。すると先生は10人くらいの子供たちを壇上にあげて横に並べさせた。そしてバレーボール大のボールを順送りにバケツリレーさせた。不純物をドーピング(混合)すると電子がかけた正孔(ホール、この場合はボール)という+の穴ができ、それが移動することで電流が流れる現象を、ゲームのような体験をさせて、可視化して見せたのだ。
このときいただいた先生のサイン入り元素周期律表は私の宝物。

白川先生は2016年11月に東工大の科学技術創成研究院の設立記念式典で、2016年におなじくノーベル生理学・医学賞を受賞した大隅良典栄誉教授、2016年日本国際賞を受賞した細野秀雄教授らと講演をされている。
そこでは「東京工業大学で学んだこと」と題して「人との出会いの大切さ」について話された。3先生の講演内容は東京科学大学のこのサイトで読める。
おまけ
諏訪で開かれた講演会では、ノーベル委員会が規制をかけているとのことで、白川先生とのツーショット写真はいただけなかった。しかしそれから11年後の2018年5月26日、ノーベル賞を受賞された大隅良典栄誉教授とのツーショット写真はいただけた。その日に開かれた東工大のホームカミングデーの講演会のあとの懇親会でお願いして実現した。この講演会では大隅先生は、受賞のテーマとなったオートファジーの話と共に、若者に向けたとても有意義なメッセージをくださった。ノーベル賞委員会が写真撮影条件を緩めたのかどうか確かめるのを忘れたが、付帯情報として掲載する。




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